人生、失敗ばかりだと考えている方、いらっしゃいませんか?
思い返せば、あれもこれも上手く行かず、中途半端で道半ばの不完全燃焼。全力も出せず、やりきった感も充実感も得られず、振り返れば暗く、お先も真っ暗。
考えれば考えるほど気持ちが落ち込んでいく……。
そんな貴方は、もしかすると、とある心理現象に囚われているのかも知れません。
その現象とは、ツァイガルニク効果。
失敗に終わったこと、半端で終わったことを気にするのではなく、これからへ目を向けるための方法について、今回はみていきましょう。
<1> ツァイガルニク効果とは?
1-1. くよくよしてしまうのは性格のせい?
『うまくいった体験はあまり覚えていないけれど、失敗したことは鮮明に思い出せる。だからくよくよしてしまう』
という人がいます。
そうした人は、それを自分の性格のせいだ、と思っていることが多いようです。そして「私はくよくよしちゃう性格だから……」と悲観ているわけですね。
しかし、失敗ばかり覚えているというのは、実は性格の問題とは限らなく、ツァイガルニク効果の働きである可能性があります。
1-2. ツァイガルニク効果とは?
ツァイガルニク効果とは、自分が成し遂げたことよりも、失敗した事柄や未達成の事柄のほうが記憶に鮮明に残る、という現象をいいます。
これは元々ドイツのゲシュタルト心理学者であるクルト・レヴィンが提唱したものですが、その指導の下、旧ソ連の心理学者のブリューマ・ツァイガルニクが実験により発見しました。
この実験は、その内容から「邪魔の実験」と称されるものです。
1-3. 邪魔の実験
ツァイガルニクが書き残した言葉に、こういうものがあります。
「パズルを解き始めたときより、あと1ピースで完成するというときに邪魔が入るほうが、はるかにイラ立つ」
邪魔の実験はまさにこの心理状態を実証するものです。
ツァイガルニクはどんな実験をしたのか?
彼女は被験者となる教師や学生、子供を164名に対し、いくつかの作業を行わせました。パズルを解いたりダンボール箱を組み立てたり、といった5分程度もあれば終わる軽作業です。
実験中、彼女は無作為かつ定期的に被験者の作業を邪魔し、別の作業を行わせるといったことをしました。
作業の邪魔をされる被験者は決まっておらず、また邪魔についての説明は一切行われていません。邪魔をされる被験者もいれば、全く邪魔が入らずに作業を終えた被験者もいました。
驚くべき実験の結果は?
実験が終わった後、ツァイガルニクは被験者らに割り当てられた20前後の作業を、覚えている限り紙に書き出すよう依頼しました。
単純に作業に携わった時間が長ければ長いほど記憶に残ると考えれば、邪魔されずに完遂した作業の方が有利です。
しかし、書き出された作業リストを見ると、邪魔が入らなかった作業に比べて邪魔の入った作業のほうが90%多く記憶されており、作業リストの上位はほとんどが邪魔によって中断された作業で占められていたというのです。
ツァイガルニクは被験者を変えて実験を続け、結果はやはり同様でした。しかも、被験者が作業に集中しているタイミングで邪魔をするほど『記憶』に残るという結果も示されたのです。
どうしてこのようなことが起きるのか、不思議ではありませんか?
1-4. 作業の長期記憶化
中途半端なところで終わった作業は、それが半端であるために、再び作業が始まる可能性が残されます。すると、いつでも再開できるように、脳が短期記憶から長期記憶の領域へと保存先を変えるというのです。
これがツァイガルニク効果の仕組みです。
よく、板書をとったはいいけれど、ノートをきちんと整理したらスッキリして忘れてしまった、などという失敗談が語られます。あるいは教えられたことをしっかりメモしたら、そのメモをなくした途端に作業手順がわからなくなってしまった、などということも。
こうした失敗は、ノートやメモとして整理することで 『作業が完了したと脳が認識してしまう』 ことから起きてしまうのですね。
<2> ツァイガルニク効果を逆手に取って ”プラスの効果” を得るには?
2-1. 失敗を覚えているのは当然のこと
くよくよと悩みがちな人は、自己啓発に関する本を読んで、その本の中に 「失敗は気にしないで忘れてしまおう」 などと書かれてあるのを見つけると、
「失敗……忘れなきゃ……忘れなきゃ……」
と悩みまくる、というようなところがあったりします。その時点でかなり失敗を気にしていますよね。
もし忘れてしまうのが無理だとすれば、逆に考えましょう。
「ツァイガルニク効果があるのだから、失敗を覚えているのが当然なんだ……!」
そして、自分が失敗をくよくよと覚えているのは、別に性格のせいでもなんでもない、と捉えればいいのです。
それで失敗の記憶が消えるわけでもなんでもありませんが、自分自身の性格を責めることによる落ち込みスパイラルへの入り込みだけは避けられるかも知れません。
2-2. ツァイガルニク効果を記憶術として活用する
ツァイガルニク効果は、何も失敗したことだけを記憶に残すものではありません。目標未達成のもの、未完結のものもまた長期記憶として保存するのです。
であれば、
『覚えなければいけない作業や何日も掛けて進めていかなければならない作業を、敢えてキリのよくないところで中断しておくことで記憶しやすくする』
という手段があります。
一般的には、
- テキストのこの章まで終わらせてから休も
- 20個覚えたら中断しよう
というように区切りのいいところで作業を止める人が多いでしょう。ただ、その方法だと脳が区切りをつけてしまうため、あっさりと記憶から抜け落ちてしまうこともあるのです。
作業を半端にしておくと、気になって気になって仕方がない・・・。その「気持ち悪さ」こそが印象づけや記憶づけに繋がるのですね。
2-3. 会話やデートも半端に
交友関係や恋愛にもツァイガルニク効果は活用できます。
たとえばデートへ行く場合でも、観るものを全部観て、乗り物にも全部乗り、食べるものも一通り食べ、話せる話題も話し尽くしたとなれば、確かに満足感は大きいでしょう。
しかし、スッキリはするかも知れませんが、そこで終わってしまいます。
キリがいいところまでイベントを済ませてしまったからです。
むしろ、観るものを少し残し、乗れなかった乗り物があり、気になるメニューもまだあって、肝心の話もあまりできなかった、などという消化不良のデートだったら、「また行きましょう」となることでしょう。
出来なかった事を口実にすれば、次回のデートも誘いやすいと思いませんか?
そこで「中途半端だった。アレもこれもできなかった。失敗だ……」と考えるのではなく、次回に繋がった、と捉えればちょっと幸せな気持ちになれませんか。
<3> ツァイガルニク効果で選択と記憶を制御しよう!
3-1. 記憶の一部は制御する事ができる
日々の生活の中で、あらゆる選択をタスクと捉えてみると、一日に100回~9000回まで様々な選択肢があり得るといいます。その中には、
- どちらの手を使うか?
- どちらの足から踏み出すか?
といった無意識的に行われるようなものもあれば、
- 朝食に何を食べようか?
といった意識的に行われる選択もあります。
それら数多の選択の中から、『何を覚えておいて』 『何を忘れるのか』 というのは自分で完全に制御できるわけではありません。
自分でも驚くようなつまらないことを覚えていることもあれば、これだけは忘れてはいけないだろうというような重大な事柄がポッカリと頭から抜け落ちていることもあります。
しかし、心の働きの理論を知ることで、その記憶の一部分は制御できることもあるのです。ツァイガルニク効果は、そういった方法の一つです。(詳しくは2-2. で述べた通りです)
3-2. ツァイガルニク効果を意識した捉え方を
失敗をどれだけ気にするかというのは、個人差がありますし、それこそ性格の問題もあるでしょう。
ただ、気にしてしまうことや、失敗をいつまでも覚えていて、引きずってしまうことそのものを「よくないことだ」と思ってしまう考え方自体が、自分をさらに落ち込ませることもあります。
失敗した事(成功を阻害された事)の方が良く覚えているはツァイガルニク効果を影響です。可能であれば、くよくよしてしまう自分というのを丸ごと認めてしまった上で、こういうものなんだ、仕方がないんだと開き直ってみるのもいいでしょう。
『変えようとして変えられないなら、受け容れてみる。』
これが気持ちよく……少しは気を軽くするために重要なことです。
<4> ツァイガルニク効果のまとめ
ツァイガルニク効果が教えてくれることの一つは、物事を完了させてスッキリするだけが最良とは限らない、ということです。
- やりかけたことは最後まできちんとやる
- 予定は確実に消化する
- 仕事も恋愛もきっちり区切る
世の中ではこのように出来る人が、しっかりしていると見なされます。
しかし、別にしっかりしていなくてもいいのです。心の形が万人に共通のものではないように、生き方も人それぞれで違ってよく、正誤はそこにありません。
割り切れる人生をスッキリ生きるのも、敢えて割り切らないことを逆手に取って愉しんでみるのも、貴方次第なのです。
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