産業カウンセラー資格の取得を目指す人は色々な立場の人がいるのではないかと想像しています。大切な事は「何を目的に取得するのかを考えること」ではありますが、産業カウンセラー資格の取得や取得後に活用するためにも「産業カウンセラーとは何か?」知ることが第一ではないでしょうか。
ここでは、産業カウンセラーの位置付けや仕事内容、資格取得までの道のり、および取得者の実態を通して『産業カウンセラーとは何か?』についてご紹介していきます。
【1】
産業カウンセラーとは?
産業カウンセラーとは、一般社団法人産業カウンセラー協会が認定する民間の資格となり、大きく分けて
- 産業カウンセラー
- シニア産業カウンセラー
の2種類の資格が存在します。
産業カウンセラーは働く人達が抱える諸問題を心理的手法で自ら解決できるように援助することが目的とされた心理職資格(心理カウンセラー)とされており、その活動領域としては、
- メンタルヘルスへの援助
- 人間関係開発への援助
- キャリア開発への援助
の3つが挙げられています。
現在、産業カウンセラー資格は民間資格となっていますが、もともと1992年から2001年にかけては、旧労働省が認定を行う公的資格でした。つまり、産業カウンセラー資格の地位は確立されており、心理カウンセラーの資格の中では、公認心理師や臨床心理士と並んで知名度の高い位置付けとなります。
資格を取得する条件としても指定の養成講座を修了することで産業カウンセラー資格試験の受験資格を得ることが出来ますので、例えば、企業の人事やマネジメントに携わる方のキャリアアップはもちろんのこと、これから産業カウンセラーを目指す方にも人気の資格となっています。
今後として、2015年から企業でのストレスチェック義務化により、職場でのメンタルヘルスが注目されていますから、ますます産業カウンセラーの需要は高まることと想像しています。
【2】
産業カウンセラーの仕事内容
産業カウンセラーの主な仕事内容は働く人のメンタルヘルスに関る業務全般です。
具体的には、
- 就労支援
- 職業復帰に関ること
- 労働者のメンタルヘルスへの援助・相談
- メンタルヘルス対策のプラン作りや運営・教育研修
などに関ることがあります。心理学の知識を利用して、キャリア開発や職場の精神衛生環境を向上するための様々な業務に関ると言えます。
ストレスチェック・プログラムや従業員支援プログラム(EAP)を提供する会社や団体のニーズが増えています
2015年のストレスチェックの義務化にともなって、ストレスチェックプログラムの導入提案や、その運営などに関わる仕事や求人は増える傾向にあります。企業が外部の提供団体と契約して、ストレスチェック・プログラムの運営や管理を委託するという形が多くなっています。
更に、このストレスチェック・プログラムよりも広い範囲をカバーする『従業員支援プログラム(EAP)』を提供する企業も増えており、ますます産業カウンセラーの活躍の場が広がっています。
従業員支援プログラム(EAP)とは?
EAP(Employee Assistance Program)= 従業員支援プログラム
働く人の心の健康の維持や回復を支援するプログラムです。従業員の生産性向上のためにメンタルヘルスが大切だという考え方に基づいています。
心の病に対する予防対策研修や早期発見システム、休業者の復職支援など、生産性向上につながる健康に働くための環境作りの業務全般に関ります。
EAPに携わる産業カウンセラーの仕事内容としては、
- 相手先企業の人事部などにプログラム導入を提案営業する業務
- 従業員支援プログラムの運営・実務(プランや資料作り、報告書作成など)
- 従業員のカウンセリングを産業医などにアレンジする業務
- メンタルヘルスに関る教育や研修の企画運営
などが中心となり、多くは3年~5年の実務経験が必要になっています。
【3】
産業カウンセラーになるには?資格取得までの道のり
産業カウンセラー資格は一般社団法人日本産業カウンセラー協会が認定する資格となります。
産業カウンセラー資格の受験資格は、産業カウンセラー養成講座を受講すれば、学歴に関わりなく20歳以上であれば誰でも受験資格が得られますので社会人からでも資格取得が目指せる所が大きな魅力となっています。
また、産業カウンセラー養成講座は働きながら受講できるようなe-Learning制もありますので、在宅で学習を進める事ができる点もうれしい所です。尚、産業カウンセラー資格取得者の85%は養成講座修了者です。
それでは、実際に産業カウンセラー資格を取得するまでの道のりをご説明していきます。
3.1 – 産業カウンセラー資格の受験資格を得る
産業カウンセラー資格を取得するためには受験資格を得る必要性があります。つまり、資格取得までの道のりとしては、受験資格を満たした後、資格試験を受けて合格する必要性があるという事です。
この受験資格ですが、下記①~④のいずれかを満たせば得られる事が可能です。(下記条件は、一般社団法人日本産業カウンセラー協会がしている受験資格を概要化したものであり、必要取得科目に関する情報は省略しています。)
- 試験日に20歳に達している者で、一般社団法人日本産業カウンセラー協会が行う産業カウンセリングの学識及び技能を修得するための講座(産業カウンセラー養成講座)を修了した者
- 4年制大学学部において心理学又は心理学隣接諸科学、人間科学、人間関係学のいずれかの名称を冠する学部又は専攻(課程)の卒業者であり、かつ、協会が行う産業カウンセリングの技能を修得するための講座を修了した者。
- 大学院研究科において心理学又は心理学隣接諸科学、人間科学、人間関係学のいずれかの名称を冠する専攻(課程)の修了者。
- 社会人として週3日以上の職業経験を通算3年以上有し、大学院研究科において心理学又は心理学隣接諸科学、人間科学、人間関係学のいずれかの名称を冠する専攻(課程)の修了者
※「一般社団法人日本産業カウンセラー協会 受験資格について」より一部引用
受験資格に関する補足説明
①については、20歳以上で産業カウンセラー養成講座を修了した方です。もっともスタンダードな方法と言えます。
②については、4年制大学にて一般社団法人日本産業カウンセラー協会が指定する学科を修了しており、更に産業カウンセラー養成講座にて技能講座を修了する必要があります。つまり、養成講座にて学識面での勉強が免除される形です。いずれにしても心理系科目を大学で学んでいる事が条件になりますので、例えば、経済学科を卒業している方は対象にはなりません。
③については、大学院を卒業しており、かつ、指定科目を修了している事が条件になりますので、もっともハードルが高い条件になりますが、産業カウンセラー養成講座の受講がすべて免除されます。
④については、上記で細かい単位取得内容について記載していなかったのですが、③よりも単位取得が少ない者が社会人経験という形で補填・免除されるという内容になります。
要約すれば、A).産業カウンセラー養成講座を修了している方、もしくは、B).大学院で指定科目を修了し卒業している方の2つの受験資格獲得ルートがあると考えて頂ければ良いです。もし、大学院で指定科目を修了している方がいるのであれば、産業カウンセラーより上位な公認心理師や臨床心理士の資格取得が狙える可能性がありますので、これらの資格も視野に入れて情報収集すると良いと思います。
3.2 – 産業カウンセラー養成講座を受講する
産業カウンセラー資格を取得するほとんどの方が”産業カウンセラー養成講座”を受講することになります。ここでは養成講座の仕組みと費用について触れますが、協会のホームページでも確認することが可能です。
産業カウンセラー養成講座の受講スタイル
養成講座は6ヶ月コースと10ヶ月コースの2通りから選択することが可能です。2019年からは通信制を廃止し、e-learning制へと変更になりました。つまり、Web配信による講義受講が中心となります。この通信制とe-learning制の主な変化点は、
- 受講期間が12ヶ月から6ヶ月へと短縮
- Web配信講義視聴の追加
- 受講費用が226,800円から291,600円へと値上げ
となっています。産業カウンセラー養成講座は実技演習に力を入れている所が特徴ですので、協会のサイトでも謳っているように、産業カウンセリングは「人の話に真摯に心を傾ける」ことが基本であり、そのために「傾聴」の技法が重要であるとされています。
したがって、カウンセリング体験学習は講座を通じて104時間を設けるなど手厚くなっています。e-Learning制となっても、実技演習については最寄りの協会で受講が必要となりますので、完全在宅で完結する訳ではありませんので注意が必要です。
カウンセリング演習では、10数人のグループに2人の指導者が付き、カウンセラー役・クライエント役・客観的な第三者に分かれて体験学習するとしています。民間の通信教育では実技演習が手薄になることが多いですが、産業カウンセラー協会の養成講座は実技演習が手厚いので実践力を養うのに最適です。
開校教室(面接実習会場)- 産業カウンセラー養成講座
先述した通り、e-Learning制になっても土日に教室へ通い実技演習を学ぶ必要性があります。下記は教室の一覧になりますので、各支部協会ホームページを探す場合はこちらにアクセスしてください。
札幌・盛岡・仙台・高崎・長野・新潟・小山・宇都宮・さいたま・水戸・つくば・柏・千葉・代々木・日本橋・品川・立川・横浜・静岡・名古屋・三重・北陸・大阪・滋賀・和歌山・愛媛・岡山・広島・鳥取・松江・山口・愛媛・福岡・佐世保・熊本・鹿児島・浦添
尚、開校教室についてはこちらからも確認することが可能です。
学習要綱 – 産業カウンセラー養成講座
基本的には下記の内容にて学習を進めて行きます。
- 【通学】面接の体験学習 15~16日間(104時間)※基本土日です
- 【通学】ライブ理論講義 2日間(12時間)※基本土日です
- 【e-Learning】Web配信講義視聴 32時間相当
- 【e-Learning】理解度確認テスト 13時間相当
- 【在宅】面接の体験学習に関する在宅課題6課題 28時間相当
受講費用 – 産業カウンセラー養成講座
291,600円(6ヶ月)
3.3 – 産業カウンセラー資格試験を受験する(試験日程・費用)
産業カウンセラー資格の試験日程は毎年1回しかありませんので注意が必要です。(基本的には毎年1月に実施)また、出願期間も定められていますので、こちらも合わせてご確認ください。
尚、産業カウンセラー資格試験を受験するにあたって必要な費用は下記の通りです。
項目 | 費用 |
学科試験 | 10,800円 |
実技試験 | 21,600円 |
登録料 | 7,000円 |
年会費 | 7,000円 |
費用合計 | 46,400円 |
尚、5年毎に更新料(3,000円)がかかります。年会費は別途。
【4】
最後に
産業カウンセラー資格では、ある程度の費用がかかるものの養成講座を修了する事で受験資格が得られるので、他の有名な心理職資格である公認心理師や臨床心理士と比較して、社会人からでも資格取得を目指せるというのが本当に嬉しいところです。
それでありながら、産業カウンセラーは公認心理師や臨床心理士に次いで知名度がありますので、心理カウンセラーを目指している方で、時間とお金に余裕がある場合は積極的に狙っていきたい資格です。
ただし、資格を取ってすぐに産業カウンセラーとして活動できる人は少なくなっています。実務経験を積んだり上級資格を取ってカウンセラーとして活動している人もいますので、産業カウンセラー資格は、心理カウンセラーへの入口のひとつと言えるでしょう。
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心理学やカウンセリング技法を学ぶことは、自分自身やまわりの人への理解が深まり、 人間関係能力 や コミュニケーション能力 を向上させることが出来ます。その結果、人間関係を良好に保つことが上手になり、対人関係から生まれるストレスを大きく軽減すること が可能になりますので、人生の幸福度が上がるという大きなメリットがあります。
もちろん、心理カウンセラー資格を取得して 相談業務 などの仕事をしたり、 独立開業 して自分で人の役に立つ仕事をしていくことも可能です。
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