返報性の原理とは?

1.返報性の原理とは

返報性の原理とは、他者から施しを受けた時、お返しをしなければならないという感情をいだく原理のことを指します。(※返報とは”報いること・仕返し・返礼・返信”という意味があります。)

返報性については様々なものがあり、

  • 好意
  • 譲歩
  • 敵意
  • 自己開示

であったりします。

たとえば好意的な例でいうと、好意を示されたらこちらも好意を返さねばならないという感情が働きます(好意の返報性)し、譲歩であれば、譲歩された分だけ自分も譲歩をしなければならないという感情が働く(譲歩の返報性)のです。

身近な一例ですが、スーパーやデパートの試食売り場で試食した場合、そのまま買わずに立ち去るのは少しばかりの抵抗を感じる様な経験はありませんでしょうか?

これは、試食という “施し” を受けたので、こちらもお返しとして商品を買わなければならないという心理が働くためであると考えられます。

 

2.数々の実験で実証された返報性の原理

デニス・リーガン博士の実験|好意の返報性

返報性の原理に関する実験の一つとして、心理学者のデニス・リーガン博士によるものがあります。

この実験は、二人一組で行われます。互いに面識のない二人のうち、一人は実験のための助手であり、もう一人は被験者です。部屋の中に二人を待機させ、休憩時間に助手が部屋から出ていき、ドリンクを買ってきます。これには2つのパターンがあります。

  • 被験者の分もドリンクを買ってくる。
  • 自分の分だけドリンクを買ってくる。

そして助手は被験者に対し、「チャリティーくじを何枚か買ってくれないだろうか」と持ちかけるのです。すると②の場合と比べ、①の場合では購入率が2倍近くにまで上昇したというのです。

これは、ドリンクをおごってもらったために、チャリティーくじの購入という「お返し」をしなくては、という心理が働いたためと考えられます(好意の返報性)。

ロバート・B・チャルディーニ博士の実験|譲歩の返報性

また、『影響力の武器』などの著作で知られている、社会心理学者のロバート・B・チャルディーニ博士による実験もあります。この実験では、グループを2つに分け、それぞれに異なる方法でボランティアの依頼を行います。

グループAに対しては、最初に「3年間、週に3時間ほどの無償ボランティアを行ってくれませんか」という厳しめの依頼を行い、その後に「1日だけ無償ボランティアを行ってくれませんか」という軽めの依頼を行います。

グループBに対しては、最初から「1日だけ無償ボランティアを行ってくれませんか」とだけ依頼をします。

その結果、1日無償ボランティアの依頼を引き受けた被験者の割合は、グループAでは74%、グループBでは29%となりました。なお、実際に無償ボランティアを行ったのはグループA全体の62%、グループBでは14%となったのです。

これは、グループAでは最初の厳しめの依頼を断った(相手に譲歩させた)ため、次の軽めの依頼は引き受けよう(自分も譲歩しよう)という心理が働いたためと考えられます(譲歩の返報性)。

 

3.ビジネスや恋愛で ”返報性の原理” を活かす方法

● 返報性の原理をビジネスシーンで活用する方法

返報性の原理は 自分の要求を相手に呑んでもらいたい時 に様々な場面で活用することができます。

ビジネスシーンを一例とすると、

  • お客様へ商品を販売したい場合(営業軸)
  • アンケートを集めたい場合(マーケティング軸)

などに活用できます。

例えば、道を往く人を呼び止め、ポケットティッシュやキャンディーを渡し、相手が受け取ってくれたら「実は簡単なアンケートを実施しておりまして」というように頼めばいいのですね。よく見かけるケースだと思いますが、これは 好意の返報性 を利用した心理テクニックとなります。

また、営業において、最初にちょっと高めの商品を紹介してから、次にややリーズナブルな商品を勧めれば、最初からリーズナブルな商品を勧めた場合よりも成約の可能性は上がると考えられています。これは 譲歩の返報性 を利用したテクニックです。営業マンがもっとも高機能で高い製品から勧めてくるのはこういった理由からだったのですね。

● 返報性の原理を恋愛で活用する方法

それでは、恋愛における返報性の原理の活用方法をみていきましょう。

恋愛の場合では、相手に対して、

  • プレゼントを贈る
  • 褒める
  • 手助けをする

といったことが考えられますが、これはストレートな好意の返報性の原理であり、自分が好意を与えれば与えるほど、相手からも好意が返されるという好循環が生まれるわけですね。

逆に、与えることを惜しんで、「相手がやってくれて当然」「察してくれて当然」という態度でいると、相手もあなたへ好意を持つ理由がなくなります。つまり、百年の恋も醒めてしまいかねません。

相手へ好意を伝えるというのは、何も恋愛関係だけに限った話ではなく、あらゆる人間関係を良好にするための心理テクニックですから、相手が好意を持ってくれるのを待つのではなく、積極的に自分から相手を好きになるように心掛けるといいかも知れません。

 

4.”返報性の原理” のまとめ

人は、誰しも『損はしたくない』と考えがちです。失うよりは得たいし、奪われるよりは奪いたい。それが素朴な欲求というものかもしれません。

ただ、返報性の原理について色々な視点で見てくると、ひとつ大切な事が分かってきます。

それは、他者へ与えることは自分にとって損失ではないということです。もちろん、すべてに当てはまる事ではありませんが、返報性の原理のように、与えることで返ってくるというのもまた、人であるがための原理原則です。古いことわざに『損して得取れ』といった言葉がありますが、その意味はまさに返報性の原理を指しているかの様です。

他者に与えることが自分にとって得なのか損なのかは必ずしも短期的には決まりません。ただ、人と人という関係の中では、長期的に見て得をする。それが返報性の原理ではないかと考えています。

ビジネスや恋愛といったシーンに限定されず、他人との関わりを持つ上で重要となるのが返報性の原理。目先の損得に囚われることなく、誰かへ与えることができれば、そこには新たな関係性と豊かな人生が待っているはずです。

それこそが、最も大きな『得』だといえるのではないでしょうか。