心理カウンセラーの実力が発揮されるのは『質問力』であり、良い質問が出来ることで、相談者 (クライエント) の本音や言いたい事を引き出せると言っても過言ではありません。
カウンセリングの場では、まず 傾聴の姿勢が基本 となり、相手をありのままに受容れることが大切なのですが、カウンセリングの目的は、相談者の心の変容を導くことで解決の気付きをもたらすこと です。
しかし、「そうですか、ふむふむ」と聴いているだけでは、カウンセリングが進まない場合があり、そんな時に事態を打開するのが 質問力 なのです。
質問と言っても ”良い質問” と ”悪い質問” があり、冒頭でお話した通り、カウンセラーの技量は質問力にかかっていると言えます。
ここでは、コミュニケーションに於ける 『質問力』 について解説していきますので、
- これから心理カウンセラーを目指す方のステップアップや
- 実際に相談者として、カウンセリングを受ける方の心構え
として、カウンセラーが何を求めているのか知るきっかけにもなると思います。また、質問力を高める方法 についても後段で解説しますので、日常生活の中で、ビジネス(会社での仕事)や恋愛に於ける人間関係の向上に活かしてみてください。
【1】
質問力は『コミュニケーションの要』
話題が豊富であったり、楽しく会話できる事がコミュニケーション上手と思いがちですが、実は質問力こそがコミュニケーションで非常に重要 です。これが上手くいけば、人間関係を良好にするのはもちろん、営業などのビジネスや恋愛などにも活かす事が出来ます。
ここで、一般的にありそうな会話の例を挙げてみます。『質問力』 という観点で会話をみてみましょう。












BさんとCさんはしっかりと意思表示をしており、Aさんは何も意思表示はしていません。しかし、会話をリードしているのはAさんでしたね。
Aさんは質問することによって、お互いが良い感じで意見の摺り合わせができるように自然に導くことが出来ています。もしも、Aさんが最初から居酒屋に賛成していたら、Bさんには不満が残るかもしれません。
Aさんが的確な質問をすることによって、Bさん・Cさんが主張するそれぞれメリットとデメリットを確認することができましたので、この先の会話では、それをベースとしたお店の選び方で会話が進むことになるでしょう。
このように 質問力は、よいコミュニケーションの要となり、自己主張よりも重要な役割を果たす という事例でした。
【2】
悪い質問と良い質問 – クローズド・クエスチョンとオープン・クエスチョン
質問には大きく分けて、2つの種類があります。
1つは、クローズド・クエスチョンと呼ばれ、『答えの範囲が限定される質問』であり、もうひとつは、オープン・クエスチョンという『答えの範囲の自由度が高くなる質問』です。
これらの質問はどちらかが良い質問という訳ではなく、時と場合によって使い分けるのが効果的とされています。
クローズド・クエスチョンとは? – 答えの範囲が限定される質問
判りやすく言うと、はい (YES) or いいえ (NO) で答えられる質問です。
例えば、病院の診察の時に、「以前病気をしたことがありますか?」 , 「服用中の薬はありますか?」などの質問がありますね。この質問に対する答えとしては、「はい」 か 「いいえ(ありません)」 の2択で答えると思います。
また、「あなたはどの政党を応援していますか?」、「あなたは年に何回くらい旅行に行きますか?」など質問の場合も、「○○党です」や「3回くらいです」など、 答えの範囲が限定される質問 となります。
つまり、それ以上の答えを求めない場合に使う質問を クローズド・クエスチョン と呼びます。目的や意図があって、事実の確認が必要な場合などに有用です。
オープン・クエスチョンとは? – 答えの範囲の自由度が高くなる質問
- 「この人に、何を期待しますか?」
- 「あなたがそれを好きなのは、なぜですか?」
- 「この問題を、どのように解決すると良いと思いますか?」
などは、答えの自由度が高く、相手に考えさせることの出来る質問になります。これを オープン・クエスチョン と呼び、相手の考えや気持ちが引き出せる質問方法となります。相手から一歩踏み込んだ情報を得たい場合に効果的な質問 です。
悪い質問と良い質問の事例
それでは、カウンセリングの場に於ける悪い質問、良い質問の例を挙げてみましょう。
悪い質問の事例
へぇ、バンドですか、いつ頃からやっているのですか?
悪い質問についての解説
この会話では、何が問題なのか分かりますか?
会話を読んでみて淡々とした印象を受けたと思います。この会話の流れでは、相手はバンドをやっているので『どうやら音楽が好きらしい』という事は判りますが一向に話が広がりません。相手の言葉にも考えや気持ちやが現われていません。
この会話の質問は クローズド・クエスチョン になっており、 相手の答えが限定 されてしまっています。目的があって端的に確認が必要な時はこれでも良いのですが、クローズド・クエスチョンの連続では、話の広がりや深みは期待できませんね。
このような質問に律儀に答えていると、相手もまったく面白くありません。
カウンセリングの場は事情聴取ではないので、相手に語ってもらい、心情や考えを知るための情報が必要です。
それでは、どのように質問すると良いのでしょうか?
良い質問の事例
先ほどの 『悪い質問の例』 で挙げた会話を、このように変更したらどの様に感じるでしょうか?
良い質問に関する解説
いかがでしたでしょうか?
会話の広がりを感じませんでしたか?そうすると相手の背景や気持ちが具体的な言葉で語られ、いろいろな情報や次へのキッカケがつかみやすくなります。
この質問は オープン・クエスチョン になっており、答えの自由度が高く、相手からいろいろな情報を得られます。
当時の仲間との話から、どちらがどう誘ったのかなど、人間関係に対する考え方のヒントが得られますね。さらに、「どんな音楽や曲が得意なんですか?」などと質問すると話が発展して、聞かれる方も答えやすいでしょう。
このように、 発展性があり、相手の気持ちが表現しやすいような質問が良い質問 です。
良い質問か?悪い質問か?は使い分けが大切
必ずしも、オープン・クエスチョンが良くて、クローズド・クエスチョンが悪いというわけではありません。
目的や相手・用途による使い分けが大切 なのです。
コミュニケーション力に問題のある相手の場合は、負担なく答えられるクローズド・クエスチョンが良い場合もあります。例えば、小さな子どもが相手の場合などは質問の範囲が狭い方が答えやすく、まず答えることによって安心する場合もあります。
オープン・クエスチョンでも、「あなたにとって音楽とは何ですか?」のような質問は、漠然としすぎていて、どう答えていいかわからないですね。
答える範囲があまりにも広すぎたり、抽象的な質問も悪い質問 といえます。
そのような場合は、「音楽をやっていて良かったと思うことは?」など、範囲をもう少し狭めた方が答えやすくなります。
その上で、「音楽を続けたいですか?」などクローズド・クエッションで意思を確認して、「では、音楽と仕事を両立させる方法は?」というように運ぶと相手の考えも整理されて、前に進みますね。
- 相手が答えやすいこと、気持ちを表現しやすいこと
- 相手の自由な言葉・表現によって情報を引き出すこと
- 相手の話の中からヒントをみつけ、次の質問をする
このようなことを心掛けて、オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンを使い分けることが良い質問につながります。
【3】
質問の効力 – 質問されると答えてしまう / 考えてしまう
質問力とは、言い換えれば、情報や考え・気付き・意欲・信頼などを引き出す力と言えます。それだけ、質問には大きな効力があると言えるのですね。
そもそも、人から質問されるということは 『私のことに関心があるのかなぁ』 と受け取れませんか?人には 承認欲求 がありますから、自分に関心を向け、そして認めてくれる人がいると、安心感 と 好意 を持ちます。
次に大きなことは、質問されると 答えてしまう・考えてしまう という効力が質問にあるのです。但し、質問が効力を持つためには、前提条件があります。
それは、相手との信頼関係 です。
誰でも、警察の職務質問や、嫌な人からの質問など答えたくないですよね。質問が効力を持つかどうかは、実は『質問する前の関係作り』が大きく影響するのです。
良い質問は、良好な関係・コミュニケーションを作り、思考や意欲を深め、時に相手を動かします。逆に言うと、悪い質問は答える意欲を萎えさせ、コミュニケーションが低調になります。
下手な質問をされると 「この人、何もわかってないなぁ」 と途端に話す意欲を失くす経験をした事があるのではないでしょうか? だから、カウンセリングでは質問力がとても重要 なのです。
【4】
質問力を高める方法
適切な質問は、相手も気付かなかった心情を明らかにする こともあります。それが 気付きにつながる質問力 です。
ここからは、一般にも役立つ質問力を高める 5カ条 をご紹介していきます。カウンセリングにおいても、これらは基本的なことですので、しっかりと身につけて行きましょう。
① 相手の話や表現しようとする事をしっかりと捉える
相手のことを理解したい、知りたいという気持ちを持つことです。関心を持ち、認めてあげることで相手も心を開いてくれるのです。
② 相手の立場になって考える
相手が答えやすいように質問します。漠然とした質問ではいけません。もし、難しいと感じたら、「自分にその質問をしたらどう感じるか?」を考えてみると良いでしょう。
③ 相手が話したいことを質問する
自分が聞きたいことよりも、相手が話したいことを質問するのが良いコミュニケーションにつながります。
④ 相手の話の中から次の質問をする
相手の言葉から何かを拾い出して質問すると、思考や理解が深まります。
⑤ 会話の間や沈黙も大切
質問して答えがなかなか返ってこない場合は、まさに考えを巡らせている時なので決して邪魔してはいけません。また答えたけれど、何か言いたそうな場合もじっくり待ちましょう。
質問をすると
- すらすら答える場合
- 言葉を選びながら慎重に答える場合
- 迷いながら答える場合
等々、反応もいろいろです。このような反応はフムフムと聴いているだけでは得られない特別なものです。
質問に対する答え方を見れば、相手の性格の傾向や思関心事など背景を理解するヒントになります。話を聴く力と客観的な観察力が、質問力の源といえます。
【5】
まとめ
良い質問は、情報や考え・気付き・意欲・信頼などを引き出すことができ、良好なコミュニケーションの要です。そして、質問の力を活かすには、相手との信頼関係が大切というお話もしました。
カウンセリングを進める上では、相手の話や表現が全ての情報源です。しかし、すんなりと話が出て来る人は多くはありません。むしろ「こんな事、話していいのだろうか?」とか、思う人が多いのも事実です。
また、適切な質問というものは、相手も気付かなかった心情を明らかにすることもあります。それが気付きにつながる 質問力 なのですね。
この 『質問力』 を普段から意識しておくと、カウンセラーを目指す方以外にも、仕事や日常生活のコミュニケーションにも役立ちますので、ぜひ、学んでみてください。
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