性格や人格には一人ひとり違いがあり、これは生まれ持ったものや生活環境からの影響を受けます。
人生全体を通じて形成されるパーソナリティーですが、 どのように発達し形成されていくのかを明らかにしていこうとするのが人格心理学 です。
1.人格心理学とは?
人格心理学は、 性格心理学 や パーソナリティー心理学 とも呼ばれています。
パーソナリティー(Personality)には人格や性格の意味があり、つまり 人格や性格を研究するのが人格心理学です。
一人ひとり人格や性格が違いますが、人格心理学では、
- どこまでが遺伝で決定されているのか
- 乳幼児期の家庭環境などが人格形成にどのようにして影響を与えるのか
を研究しています。
さらには自らが人格を形成し作り変える可能性についても研究されています。
人格とは具体的にはその人の行動や感情により表現されますが、人格心理学ではこれらの 行動・感情を丁寧に観察することで人格の個人差やそれに関わる因果関係について明らかにしよう とします。
2.人のパーソナリティーの捉え方について
人格心理学では人のパーソナリティーを学問的に2つの考え方で捉え整理しています。
人格心理学で用いられる理論はこちらの2つです。
- 類型論
- 特性論
類型論とは性格の典型がいくつかあり、この中のどれに近いかという発想から考える理論です。
特性論は性格にはいくつかの構成要素があり、その要素がどのくらい備わっているかという発想から性格を考える理論になります。
2-1. 類型論とは
類型論とはどんな理論なのかを詳しく見ていきましょう。
人の性格をいくつかのカテゴリに分類して、ある人の性格はどのカテゴリに属しているのかを考えていく のが類型論です。
よく心理関連の本で見られる 『血液型で性格のタイプを見る』 のも類型論の考え方です。
几帳面な性格をA型タイプ、おおらかな性格をO型タイプというように、このタイプの人はこんな特徴や傾向があるとカテゴリにはめていくのが類型論です。
血液型による性格診断は非科学的ではありますが、これも類型論の考え方によるものです。
心理学の類型論で有名な心理学者ユング
心理学で代表的な性格の類型論には、著名な心理学者カール・グスタフ・ユング(1875-1961)による内向型と外向型による分類があります。(ユング心理学と言う)
これは性格そのものをカテゴリ分けして、一人ひとりのタイプを見ていきます。
クレッチマー(独)も類型論を展開した
または、ドイツの精神科医エルンスト・クレッチマー(1888-1964)による体格によって性格を分類しようとする体格気質類型論も有名です。
クレッチマーは、パーソナリティの中心は気質であると考え、体型と気質を結びつけた3つの類型があるとした。
- 細長型 – 分裂気質。静か、控えめ、真面目。(敏感性と鈍感性)
- 肥満型 – 躁うつ気質(循環気質)。社交的、親切、温厚。
- 闘士型(筋骨型) – 粘着気質。きちょうめん、熱中しやすい、頑固、興奮しやすい。
類型論はあくまでも大まかな傾向を見ることが目的
ユングによる内向型と外向型では性格そのものを分類する考え方ですが、血液型や体格など一見、人の性格や人格には関係ないように思える側面から類型論的なアプローチもできます。
類型論は人の性格や人格を大まかに見ていくことができるというのが特徴で、例えばユングの内向型、外向型では内向型の人が20人いたとしても、また一人ひとり違う性格を持っているはずです。
類型論では、このように大まかな傾向を見るだけで細かい性格については見ていません。
あくまでも大まかなカテゴリのみを使う分類方法なので人に当てはめやすいものの、細部は無視してしまう点がデメリットと言えるでしょう。
そのため、今の人格心理学では類型論が使わることはあまりありません。
特定の刺激や状況下での反応は些細な考え方や性格の違いが影響しますが、類型論ではその違いを見ることができません。
細部まで表そうとすればそれだけカテゴリの数も増えるのでそれでは類型論のメリットもなくなります。
2-2. 特性論とは
性格をいくつかの要素に分けて、どの要素がどのくらい関わっているのかという側面から人の性格を捉えていこうとするのが特性論 です。
特性論では特定の人の性格をいくつかの要素で表現します。
田中さんはまじめで几帳面で誰に対しても優しいという場合には、田中さんの性格をまじめ、几帳面、優しいという要素で表しているということです。
この性格を構成する要素のことを性格特性といい、特性論では特性により人の性格を捉えていきます。
特性論を提唱したのはアメリカの心理学者ゴードン・オールポート(1897-1967)であり、性格を構成する特性をさらに 個人特性 と 共通特性 とに分類しています。
個人特性はその人特有の特性で他の人にはない部分を指し、共通特性は誰もが共通して持っている特性のことです。
特性論によって一人ひとりの性格を比較することができるのですが、類型論では違いを表すことしかできません。
一人ひとりの性格を、特性論を用いて比べることができるのは、何かの研究をする時や統一規格でたくさんの人の性格を評価したいときにはとても役立ちます。
ゴードン・オールポートが提唱したパーソナリティの特性論『ビッグファイブ』とは?
現在の人格心理学では、人の性格を評価する際に類型論ではなくて特性論が多く用いられます。特に 特性論によるビッグファイブと呼ばれる理論が利用されることがほとんど です。
ビッグファイブでは精神症傾向、外向性、経験への開放性、さらに協調性と誠実性という5つの次元で人の性格を表現しようとします。
この5つの次元の名称や内容は研究者によって違うこともありますが、それぞれの次元に得点を与えていきその人の性格を捉えていこうとするのがビッグファイブの理論です。
3.性格を変えることは可能?(人格心理学)
世間一般では、「性格は生まれつきのものだから変えられない」とよく言われますが、実は 部分的に自分自身の性格というものは変える事が可能 なのです。これは、『人の性格がどの様につくられるか?』という事を知れば納得できるでしょう。
そもそも、人の性格は 『持って生まれた部分』 と 『環境からの影響を受けて形成される部分』 があります。
生まれつき持った性格の部分を 気質 と呼び、その上に 家庭環境 などの影響を受けて形成される狭い意味での性格があります。さらにその上には社会によって形成された 社会的性格 があり、その上には今の自分の役割に応じた 役割性格 があると考えられています。
それぞれの説明は後段でしますが、これらの性格は上にある部分ほど変わりやすいと言われています。
つまり、
役割性格 > 社会性格 > 家庭環境 > 気質
この順番で変わりやすいという事ですね。
生まれつきもった性格(=気質)というのは先天的なものなので、これを変えるのは難しいかもしれません。しかし、社会性格・役割性格といった 環境的な要因に左右される部分 は自分自身の強い想い(変えようとする努力)で変える事が可能なのです。
それでは、それぞれをもう少し細かく見ていきましょう。
3-1. 気質について
生まれつき持った 気質 は基本的には変わりにくく、生涯を通じてその人の言動などに影響を与える部分であると言えます。
類型論でご紹介したエルンスト・クレッチマーは、人の生まれ持った性格である気質を体格に応じて3つに分類しています。気質はこの3つに分類されていますが、実際にはこの中間型もあるでしょう。
ぽっちゃりとした体型の人
躁鬱(そううつ)気質としています。基本的に社交的で明るくユーモアの精神があり人にも親切ですが、感情的な部分があるので激しく怒りを表現することもあります。
筋肉や骨のしっかりしたがっしり体型の人
粘着質で、几帳面で秩序を好み、物事に熱中するタイプです。
細い体型の人
分裂気質とされていて物静かで温和、お人好しですが社交的ではなくまじめで神経質な部分もあります。
3-2. 家庭環境と子供の性格は影響している
気質の上に環境の影響を受けて性格が作られるのですが、 子供にとって家庭環境や親からの影響はとても大きなもの です。
例えばあまりにも親が支配しすぎると自発性の乏しい性格になり、反対に子供の言いなりになっていると無責任な性格になります。親から否定されることが多い子供は劣等感の強い性格になりますし、過保護に育てられると打たれ弱い性格になるでしょう。
3-3. 社会的性格と役割性格
社会的性格
社会が作り上げる性格が社会的性格 で、例えば男らしくとか女らしくという考えが人のパーソナリティに影響を与えます。
男は人前では泣いてはいけないとか、女は愛嬌が大切だなどの社会的な考え方がその人の性格形成に影響を与えるのが社会的性格です。
役割性格
また母親や父親、サラリーマンや女子高生など人にはその時々で役割というものがあります。
人生での役割に応じた、それらしい考え方や振る舞いを人は自然とするもので、これを役割性格と言います。
役割が違えばそれに応じて振る舞いや考え方も変化する ので、これは最も変化しやすい表面的なパーソナリティであると言えるでしょう。
4.まとめ
人格心理学では、一人ひとりのパーソナリティを細かく分析し整理してどのような特性があるのかを明らかにします。
人や他人のパーソナリティについての理解を深めることで、その後の人生や人間関係にも役立てることができるでしょう。
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