パブロフの古典的学習理論から行動心理の基礎を学ぼう!

学習理論は行動心理に於ける行動療法の基礎となっています。この「学習理論」を更に大きく分類すると、

の2つが基礎となっています。

ここでは、その行動療法の基礎となっている「学習理論の基礎」を説明して行きます。今回はその中で『古典的条件づけ』に関して、心理学の歴史上に残る実験である「パブロフの犬」を取り上げながら出来るだけ分かりやすく解説して行きます。

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パブロフの犬の実験 – 始まり

パブロフの犬は、心理学に興味の無い方でも一度は聞いた事がある言葉ではないでしょうか?

これから心理学の勉強を始める方にとっては、パブロフの犬に関する実験は 行動心理の基礎としてだけではなく、心理学の基礎知識として重要な知識 になってきますので、是非、その基礎を理解しておきましょう。

「パブロフの犬」という実験は、20世紀はじめの頃に、ロシアの生物学者である パブロフ,I.P.(1849-1936)によって行われました。

外部リンクイワン・パブロフとは?(ウィキペディア)

生物学者だった彼は、当初は犬を使って、消化と唾液の分泌に関する研究などを行っていました。ですがその過程で、餌を与える前から、特定の条件になると犬がよだれを分泌するようになる事を発見しました。これこそが有名な「パブロフの犬」の実験に至るきっかけです。

犬が餌をもらう時によだれを分泌するのは生得的(生まれつきの性質=心理学用語)に当然です。しかし、実験者が犬のいる部屋へ歩いて行くだけで、犬はよだれを出すようになっていました。

いったい、何が起こったのでしょうか?

これをきっかけに始まった「パブロフの犬」の実験を解説して行きます。

 

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刺激と反応 – パブロフの犬の実験

イワン・パブロフの刺激と反応に関する実験をわかりやすく図解で見てみましょう。

※後の理解を深めるためにも、こちらで出てくる刺激や反応に関するワードは、ここでしっかりと整理しておきましょう!ぜひ、図と文章を見比べながらゆっくり整理してみてください。

2-1. 無条件刺激への無条件反応

部屋の中に犬がいます。そこに実験者が餌を持ってやって来ます。犬はその餌に対し、よだれを分泌します。これは、生物学的に生得的(生まれつきの性質)な反応と言えます。

この場合、餌が 「無条件刺激(Unconditioned Stimulus : US)」 であるのに対し、犬がよだれを分泌する反応を「無条件反応(Unconditioned Response : UR)」と言います。

簡単に言い換えれば、犬がよだれを出すという反応を誘発させる刺激が餌という事ですね。

無条件刺激と無条件反応

 

 

2-2. ベルだけを鳴らす中性刺激

次に、犬に対し実験者はベルだけを鳴らします。この段階では、犬がベルの音を聞いて、耳を動かすなどの反応(無関連反応)を示すことはありますが、当然ここで餌に関連する反応は何も起きません。

この場合、ベルは「中性刺激(Neutral Stimulus : NS)」となります。

中性刺激

 

2-3. 条件刺激(餌)と中性刺激(ベル)の対呈示への条件反応

さらに、実験者はベルを鳴らしながら餌を犬へ持っていきます。これを何度も繰り返します。すると、段々とこの状態でも犬はよだれを出すようになります。この仕組みが『古典的条件づけ』と言われます。

しかし、この状態では、未だ、餌は無条件刺激でありベルも中性刺激であると言えます。

この餌とベルの2つを合わせて、刺激として犬へ提示することを対呈示(ついていじ)と言います。また、この2つの刺激を合わせて犬に対呈示することを指して、実験心理学では強化と呼んでいます。

※対呈示・・・無条件刺激と条件刺激を一緒に提示すること
※強化・・・刺激と反応を結びつける手段

対呈示への条件反応

 

 

2-4. 条件刺激に対する条件反応

上記までの「古典的条件づけ」の過程を踏むと、犬はベルの音だけでよだれを出すようになります。つまり、犬はベルの音だけでよだれを出すという学習をしたと言え、「ベルの音が聞こえたら餌をくれる人が来る」という反応に変わったと言い換える事ができます。

この場合、ベルが「条件刺激(conditioned Stimulus : CS)」であるに対し、イヌがよだれを出す反応を「条件反応(Conditioned Response : CR)」と言います。

条件刺激に対する条件反応

 

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様々な応用反応を起こした「パブロフの犬」の実験

条件刺激はパブロフの犬の実験のベースとなるものでしたが、そこから応用して様々な結果が得られました。その応用結果をみていきましょう。

般化:似たような刺激でも反応が見られた

パブロフは、ベルの音だけではなく様々な条件下で同じ実験を繰り返しましたが、犬の反応はベルの音の刺激と同様でした。

例えば、「ベルの音」の代わりに「チャイムの音」であったり、「足音」であったりと「条件刺激」になるものを増やして行きましたが、犬はそれらの音でもよだれを分泌するようになりました。このように、似たような「条件刺激」にも反応を示すようになることを般化(はんか)と言います。

弁別:違いを区別するようになった

逆にこれらの中で例えば、ベルの音やチャイムの音の時にだけ餌を与え、「足音」の時には餌を与えないなどの実験を進めた結果、犬はベルの音・チャイムの音の時にはよだれを分泌し、「足音」ではよだれを分泌しなくなるなどの結果も出ました。これを弁別(べんべつ)と言います。

※弁別・・・違いが分かり区別すること

消去:条件が解除される

また、いったん条件づけされた犬 (ベルの音だけでよだれを分泌するようになった) に対し、条件刺激(ベルの音)だけを与え続けて餌を与えないと、次第に犬はよだれの分泌をしなくなっていきます。この現象を 『消去 (しょうきょ) と言います。

※消去・・・消えること。ここでは、刺激が条件と一致しないため、徐々に反応が消えることを指す。

自己回復:消去された状態から条件刺激が回復する

上記からの続きになりますが、消去された状態で条件刺激である ベルの音を鳴らすのをしばらく休止すると、イヌは徐々によだれを分泌する反応を取り戻して行き、再び条件刺激であるベルの音でよだれを分泌するようになります。この現象を自己回復と言います。

高次条件づけ:別の条件刺激でも反応するようになる

パブロフは、「条件刺激」にベルの音や似たような音だけでなく、もっと様々な種類のものでも実験を試しました。例えば、条件刺激となる”ベルの音”の後に、新たな条件刺激を追加して行ったのです。

ベルの音だけでよだれを分泌するように学習したイヌに対し、ベルの音の後にさらに”ぬいぐるみ”を見せるようにします。するとイヌはベルの音だけでなく、ぬいぐるみ”を見ただけでもよだれを分泌するようになりました。これを『高次条件づけ』と言います。

このように、パブロフの犬の実験は様々な広がりを見せ、その結果は世の中を驚かせました。この古典的学習理論は有名ではありますが、”刺激” と “反応” の種類の分別がわかりづらくもあります。

ですが、先にも書きましたがまずは基礎になる ”刺激” , “反応” を頭に入れてしましましょう。そうすれば、先述した般化・弁別・消去・自己回復・高次条件づけといった応用理論の理解が深まると思います。

 

パブロフの犬 – 古典的条件付けの解説まとめ

今回はその基礎となる学習理論の中のひとつである古典的条件づけの 『パブロフの犬の実験』 の解説をしました。この実験がのちの「行動心理」や「実験心理学」へ多大な影響を与えたものであることは間違いありません。今回の古典的学習理論は基本中の基本ですので、しっかりマスターしていきましょう。

またこれから、このような「学習理論」と、実際の「行動療法」がどんな風に繋がって行くのかが、段々とご理解いただけるようになると思います。

 

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