子供のやる気を持続させる心理学的方法『部分強化理論』で効果的な教育を!

1.子供の教育には心理学の『部分強化理論』が効果的!?

優れた教育というのは、高いお金を費やして教材を与えることでも塾へ通わせることでもありません。子供の「やる気」を最大限に引き出すことです。極論すると、やる気さえあれば教材や塾などがなくとも自学自習で成績は上がります。逆にいくら良質の教材や講師によっても、やる気のない子供の成績を向上させることはできません。

それでは、どうやって子供のやる気を引き出せばいいのでしょうか?

それこそが難しく、悩ましいところですよね。

そこで今回は、心理学を活用した 『やる気の出し方』 をご紹介していきます。やる気とは ”心の問題” ですから、いくつかの心理学的なポイントを押さえるだけで、勉強への子供の意欲は劇的に向上します。

2.ご褒美とやる気はうまくつながらない!

1-1. ご褒美で子供は喜ぶのか?

子供の勉強意欲を引き出すための方法として、親が真っ先に考えつくのが 『ご褒美作戦』 ではないでしょうか?わかりやすいのが、下記のようなケースでしょう。

『テストで100点とったら好きなモノを買ってあげるよ!』

よくあるパターンですね。

成績が良ければご褒美をあげる ――― シンプルですが、やる気を湧かせる方法としては悪くありませんね。ご褒美が欲しい子供は頑張って勉強するでしょうし、それによって成績も上がることでしょう。

で、問題は この方法でずっと上手くいくかどうか? なのですね。

1-2. ご褒美で子供は喜び続けるのか?

実は、成績が良ければご褒美をあげるという作戦は短期的にこそ効果を上げるものの、決して長続きしません。初めのうちこそ子供はご褒美に目を輝かせて意欲を湧かせますが、やがてそのやる気は無くなってしまいます。

どうしてこの様な結果になってしまうのかは後々ご説明しますが、結論として、やる気を引き出し続けるには徐々にご褒美の質を上げていく という方法しか効果が無いからです。

最初はお菓子の1つ・2つ程度だったのが、次第にオモチャやゲーム機、お金、ブランドバッグといった高額なものでなければ、子供は動こうとしなくなります。

では、どうしてこのようなことになってしまうのでしょうか?

1-3. ご褒美の甘さに子供は慣れてしまう・・・

心理学的用語になってしまいますが、ご褒美というのは一種の『刺激』です。どのような刺激でも与えられ続けると人は慣れてしまいます。

いつも優しい恋人のことをイメージしてみてください。優しいのは嬉しいことだけれど、そればかりだと物足りないな、などと思いませんか?いくら甘くて美味しいスイーツでも、そればかり食べていると飽きてきますよね。たまには醤油せんべいやポテトチップスが食べたくなると思います。

このような心理は “ご褒美” も同じです。

成績が良ければ何かを買ってもらえる。それが続くと、子供にとって『ご褒美がもらえる』というのは当たり前の状態になってしまうのです。

これでは困りますよね。

そうならないための方法こそが、やる気を引き出し続ける心理学的テクニックの『部分強化理論』です。

3.やる気を保つ秘訣「部分強化理論」とは

少しむずかしい話になってしまいますが、持続してやる気を起こさせる心理テクニックである「部分強化理論」について、簡単にその内容を把握していきましょう。有名な話ですので、覚えておいても損はありません。

3-1. バラス・スキナーの実験

アメリカの心理学者であるバラス・スキナー(Burrhus Frederic Skinner)は、刺激と行動の頻度に関する「スキナー箱(Skinner Box)」を用いた実験を行いました。

環境に対して、ある働き掛け(行動)をした結果、ある刺激が生じたとします。その刺激が行動の頻度を増大させる場合、当該刺激を正の強化刺激(強化子)といい、行動の頻度を高める強化刺激の機能を強化といいます。

そして、刺激によって行動の頻度が増大(減少)する事実をオペラント条件付けと言います。スキナーの実験は、このオペラント条件付けに関するものでした。

実験の内容と結果

オペラント条件付けを利用したスキナーの実験は、中のレバーを押すとエサが出てくる仕組みの箱を用意し、そこへラット(実験用のねずみ)を入れます。ラットはレバーを押すたびにエサが出ることを学ぶと、レバーを頻繁に押すようになるのです。

つまり、ラットがレバーを押すという行動をとった結果、エサが出てくるという刺激が生じたため、ラットのレバーを押す頻度が増したということになります。

この実験では、ある行動の後に「特定の刺激」を「適切な方法」で与えることによって、その行動の頻度を操作できる ということを示しています。

○オペラント条件付けの結果から見る子供の教育方法

つまり、 オペラント条件付けの原理を子供の教育に応用する という事になるのですが、 適切なご褒美を適切な条件で与える事ができれば、子供が積極的に勉強をする方向へと仕向ける事ができる という訳です。

それでは、どの様な “ご褒美” が子供に有効なのかをもう少し詳しくお話していきます。

3-2. 連続強化と部分強化

勉強への子供のやる気を引き出したい場合、与えるべき 『特定の刺激』 の選択肢として 『ご褒美をあげること』が考えられます。ただ、そうしたご褒美は与えられ続けると慣れてしまいますし、テストのたびに高価なご褒美をあげるというわけにもなかなかいきません。

そこで見方を変え、与える刺激ではなく 『与える方法』 を適切に工夫することで、意欲増進が見込めるのです。行動に対して刺激を与え、その頻度を高める「強化」には、2つのパターンがあります。

1つ目は 『連続強化』 。これは行動のたびに刺激を連続して与えることです。

2つ目は 『部分強化。これは行動に対して毎回ではなく時々刺激を与えることです。

事例を挙げますと、テストでいい点数を取るたびにご褒美をあげるのが連続強化、節目や重要なテストの時などにご褒美をあげるのが部分強化、ということになりますね。

3-3. やる気を起こさせる方法と維持する方法

心理学上、連続強化はやる気を起こさせるのに向き、部分強化はやる気を保つのに向いているといわれます。毎回ご褒美をあげるより、時々ご褒美をあげるようにしたほうが、子供の意欲は保たれるというのです。

部分強化では、どうしてこのような結果になるのでしょうか?

「ご褒美をもらえるのが当たり前」はダメ!

部分強化では、ご褒美への慣れが生じにくいという点が挙げられます。毎回ご褒美をもらっていたら慣れてしまいますが、時々ご褒美をもらえるのなら喜びや新鮮さが薄れにくい からです。

次に、連続強化では、毎回ご褒美をもらっていると、ご褒美がもらえなくなった時点でやる気は失われてしまう(これを心理学では消去といいます)のに対し、時々であれば喜びを感じるという点が挙げられます。ご褒美をもらえるのが当たり前になっているため、もらえなくなったことが特別な損失のように感じられてしまうというわけです。

つまり、部分強化理論では、 時々のご褒美であれば、『もらえないのが基本と認識される』 ため、たまにもらえたご褒美がとても嬉しく感じられる のですね。

したがって、やる気を出してもらうためのご褒美は、毎回ではなく時々与えるのがよいといえます。これが部分強化理論の活用方法です。

4.ご褒美の効果的な与え方

4-1. “ご褒美で釣る”のは適切なのか?

これまでご説明した “部分強化理論を活用したやる気を維持する方法” を読み進めてこられて、こう思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか?

「ご褒美目当てでの勉強は、やる気を引き出したことにはならないのではないか?」

「必要性や有用性を理解し、実感した上での勉強こそが 『真の学習意欲』 なのでは?」

こういった意見は確かに正しく、理想的でもあります。しかし、初めから理想を求めることの難しさもまた、教育を進めて行く中で実感する部分ですし、親が行き当たる壁でもあります。

『勉強とは・・・』と語れる立場にはありませんが、まずは 『学習を通じて知ること』 ではないでしょうか。単純に、お子様が”知ることそのものを楽しめる”のであれば良いのですが、多くの子供は知った内容を活用して初めて勉強が役に立つことを実感できるものでしょう。しかし、それがわかる頃には時すでに遅し、ということが往々にしてあります。(実は私もその一人です・・・。)

ある種の教育とは、その内容が役立つかどうかをまだ判断できない子供に、『今はわからなくとも、後できっと役に立つから』と勉強させることによって行われます。たとえご褒美目当てであったとしても、身についた知識や思考方法は子供自身のためになるのではないかと考えています。

その意味で、 自発的に勉強をしようとしない子供に対しては、ご褒美でやる気を引き出すのも一つの方法 ではないでしょうか?

4-2. ご褒美の様々な与え方

では、本題に入っていきますが、バラス・スキナーの部分強化理論をかみ砕けば、毎回ではなく時々ご褒美をあげたほうが勉強を促すのに効果的だ ということになります。

では、具体的にはどのようなご褒美の与え方があるのでしょうか?

部分強化を行う上で 『どの行動に対していつ強化を与えるか』 という強化のプログラムを強化スケジュールと呼んでいます。強化スケジュールには、強化を受けてからの行動回数で決める比率スケジュールと、所定時間の経過によって決める時間スケジュールとがあります。

①比較スケジュール|部分強化

比較スケジュールには行動を一定回数繰り返した場合に強化を行う『定率』と、強化が行われる行動の回数自体はランダムに決められるものの平均値や中央値は決めてある『変率とがあります。

定率・変率を子供のご褒美に活用する場合の事例

定率 ・・・ テストで5回100点を取ったら1週間限定で1日のゲーム時間を30分増やす

変率 ・・・ テストで100点を取り続けたら3~7回前後に1回、1週間限定で1日のゲーム時間を30分増やす

②時間スケジュール|部分強化

時間スケジュールには一定の時間が経った後の行動を強化する『定時隔』と、強化が行われる時間自体はランダムに決められるものの平均値や中央値は一定にしてある『変時隔とがあります。

定時隔・変時隔を子供のご褒美に活用する場合の事例

定時隔 ・・・ 1か月のあいだ勉強を頑張り続けたら遊園地に連れて行ってあげる

変時隔 ・・・ ずっと勉強を頑張り続けたら、だいたい1か月に1度のペースで旅行に連れて行ってあげる

これらの違いは、ご褒美の基準を明確にするか、それともある程度のランダム性を持たせるか、というところにあります。

4-3. ご褒美は子供に合わせたスタイルで与える

この様に、部分強化理論を活用した強化スケジュール(比較スケジュール・時間スケジュール)の中で、どの様な方法を選ぶか?については、明確に言うことができません。

例えば、『ご両親がお子様に何を求めるのか?』、反対に、『お子様自身が何を望んでいるのか?』 ということによっても変わってきます。子供によっては 『高校に合格したら何かご褒美が欲しい』 という事もありますし、『夏休みの間、毎日勉強をやることができたらご褒美』が向いているケースだってあります。

やみくもにご褒美を与えれば子供のやる気を引き出せるというものではありませんし、心理学上のテクニックを片っ端から使ったからと言って、子供は思った通りに動いてくれません。

大切なのは、親が子供としっかりと向き合い、日々の子供の様子や言動を観察して その子供にとって何が最適なご褒美となるのかを保護者の方がきちんと考えること です。それがしっかりとできれば、心理学的なテクニックも最大限の効果をあげてくれるはずです。

5.子供のやる気を引き出す部分強化理論のまとめ

それでは本記事のまとめです。

部分強化理論と子供のやる気への応用

部分強化理論はバラス・スキナーがオペラントの条件付けを基に提唱されたものです。「刺激」に対して行動が増減する法則の事を指しますが、これを応用して、子供の勉強に対するやる気を引き出し、且つ、継続的に続ける方法についてお話してきました。

子供へのご褒美の与え方

強化スケジュールを用いて、ある一定の条件のもと子供にご褒美を与える方法をお話ししました。ただし、大前提として、親の一方的な思いで進めるだけでは最大の効果は求められません。

あとがき

私も親という立場で執筆させて頂きましたが、子供の教育、特に 継続して物事を進めさせる というのは大変難しいと感じています。子供は好奇心が旺盛ですから、次から次へと気持ちが移りますし、やはり子供自身が興味を持たないと前に進まない事が多々あります(もちろん個人差があります)。

今回は『勉強』に焦点を当てて、心理学『部分強化理論』を活用した教育の進め方についてお話しましたが、そもそも勉強というのは、辛く苦しいことと思われがちですけれども、ある程度行ってみると楽しさが見えてくるものではないかと考えています。ただ、その”ある程度”の積み重ねがないと、その楽しさには気づきにくいところがあります。

これは、ルールのわからないスポーツを観戦していてもイマイチ面白くないのと同じようなものですね。

子供に向かって、「役に立つから」「そのうち面白くなるから」と言うだけでは、自発的に勉強してくれるようにはなりません。個人的には奥の手かと思っていますが、そんな時は『ご褒美』で釣ってしまうのも効果的ですし、どうせご褒美を与えるならしっかりと効果が出る形で与えたいものです。

部分強化理論は 『どのようにご褒美を与えれば子供がやる気になってくれるのか』 ということを考える上で役に立ちます。また、教育のみならずビジネスシーンなどでも活用できるので、ぜひ参考にしてみてください。

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