産業心理学とは?実際の企業組織で使われている実用例






私たち人間は日常生活で必要なさまざまなものを生み出して消費していくという経済活動を行っています。この経済活動のことを産業と言い、 産業活動に従事する人の心理を対象とした研究が産業心理学 です。

産業心理学とはどのような内容なのか、また実際の企業組織ではどのように用いられているのかを紹介しましょう。

 

<1>
産業心理学とは?

産業のための心理学が産業心理学なのですが、そもそも産業とは人間が生活する上で必要なものを生産して提供したりする経済活動のことです。一口に産業と言ってもさまざまな種類があります。

第一次産業と言われる農業や水産業、第二産業と言われる製造業や建築業、第三産業と言われる運輸業や小売業、サービス業から情報通信業まで色々とあります。

産業心理学は、この様に多くの人が産業に携わり、日々汗を流して働いていて、これらに従事する人の心理を対象としている心理学です。人間関係・適正・作業効率・市場調査・消費活動や広告などを心理学的に観察し分析して研究していきます。

1-1. 産業心理学の研究分野

産業心理学の研究分野は主に3つに分けることができます。

①組織と人間の関係性

十分に作業が行える快適な労働環境、仕事への動機付け、職業選択の理論などについての研究

②消費と人の関係性

売る側と買う側においての心理的な価値に基づく消費活動や、広告が社会に及ぼす影響や消費者の購買行動、広告が及ぼす影響などの研究

③健康と人の関係性

精神と身体の病の治療やストレスを克服するための方法などの研究

世の中には様々な企業や団体があり、皆さんはそれらの組織の中で働いている人がほとんどかと思いますが、産業心理学ではその組織のあり方や組織内での人間関係、仕事の条件や人事、採用などが研究対象 となります。

産業心理学の研究分野は以上の通りですが、つまり、 人間と生活していくための仕事に関する心理学 であると言うことができます。

昔は働くことそのものが美徳であると同時に生活の大半を占めていたので、産業心理学の大きなテーマは働くことでした。しかし、現代人の生活は以前よりもはるかに豊かになったこともあり、生活のための生産と消費や生活に潤いを与えるための家庭生活など、そのテーマが産業活動そのものから社会生活の場面へと幅広く変化しています。

1-2. 産業心理学の歴史

産業心理学の研究は、アメリカの哲学者であり心理学者のミュンスターバーグによる一連の書籍がその始まりだと言われています。

1912年から1914年にかけてミュンスターバーグは経済生活における心理学や心理学と産業能率という本を著しており、これがのちの産業心理学の研究の発展につながっています。

一連の書籍では、最良の仕事をなしうるための条件や仕事に最適な人間の選択、さらに人と仕事の接点としての経済効果に関する研究という3つの題材について研究が行われています。

これがマーケティングや人間工学、人事心理学などのさまざまな応用心理学へと広がっていきます。

それから1924年から1932年にかけて、ホーソン研究と言われる画期的な発見があります。

これはアメリカにあるホーソン工場で実施された研究で、この研究で労働者の作業効率を上げるためには職場環境を改善することよりも仲間意識やグループ内での規範の方が大切だという説が分かってきました。

ホーソン研究による新たな発見により産業心理学もさらに発展していき、組織心理学が生まれていきます。

組織心理学について

産業心理学から新しく生まれた組織心理学は、それまでの古い産業心理学に反論する形で生まれたもので、人間の心理や行動を組織との関わりから研究していきます。

特定の組織がそれを構成する個人の心理や行動にどのような影響を及ぼすのか、反対にそれぞれの個人の心理や行動が組織全体の生産性にどのように影響するのかを研究していきます。

1-3. 産業心理学の広がり

ホーソン研究による研究からさらに産業心理学は変化していき、1960年以降には産業社会の進歩や高度化、多様化なども影響して多面的な広がりを見せていきます。

人間工学という生産者としての行動から、消費者心理という消費者として行動へとその研究も多様化していきます。

産業心理学は広告やマーケティングにも活用されます。

広告やマーケティングをより効果的に展開するためには、消費者の購買意欲を上げるために心理的なアプローチが必要であるとされ、市場調査の一貫として産業心理学的研究が企業組織でも盛んに行われるようになりました。

また、広告やマーケティング以外に消費者の行動や動機などの心理的な要因や、意思決定などの消費者心理学と言われる人間行動の研究も積極的に行われるようになります。

そして集団や組織が作り出す意思決定システムや、ネットワークなどの集団力学についても研究のテーマとなっていきました。

 

<2>
産業心理学は実はとても身近な心理学です

産業心理学と聞くと、『何か難しそう』 『特別なもの』 と感じてしまう人も多いかも知れませんが、実は、皆さんっが思っている以上に身近な所で産業心理学は活用されています。

文字通り産業に関して心理学から見ていくもので、職場の人間関係から広告や消費者の行動、業界の動向などもそうです。これらのテーマに心理的なアプローチをしていくのが産業心理学と言います。

売上を伸ばす方法としても産業心理学は活用されています

会社でも個人商店でも、あらゆる商売をしている人にとって消費者(お客様)というのはとても大きな存在です。

少しでも売り上げを伸ばすためには、消費者にとって商品が魅力的であると感じてもらう必要がありますが、そのためにはどういった対策を取れば良いのかというのも産業心理学の研究テーマになります。

普段何気なく見ているテレビコマーシャルや電車やバスの中の広告、ポストに投函されているチラシなどにも産業心理学の知識が活用されています。

事例:心理的な価格設定

人がものを購入する際に一番気になると言っても良いのが、価格ではないでしょうか。

できるだけ良いものを安く買いたいと誰もが考えると思いますが、実は消費者の購買行動においては高い値段を付けた方が、売れ行きが良くなるケースがあります。

このような経済的な合理性では説明できない価格設定のことを心理的価格と呼んでいます。

心理的価格には習慣価格や端数価格、価格階段や威光価格があり高い値段の方がかえって良く売れるのは威光価格になります。

威光価格とは商品のステータスを訴えるために、意図して高く設定しているもので、高級ブランド品や宝石、化粧品や香水などに採用されています。

習慣価格は缶コーヒーやガムなどのように長年価格が一定で習慣的につけられた価格のことで、これらの値段は120円や100円であって当然であると多くの消費者が考えています。

習慣的にその価格であるだけで、よく考えてみると経済的な合理性だけでは説明できない価格であることが分かるでしょう。

198円や2980円という半端な価格のことを端数価格と呼び、消費者に安いという印象を与えるのに効果的です。価格階段は靴下3足1,000円や、Tシャツ2枚で1,500円のようにお店側の政策的な側面を強く反映した価格のことです。

 

産業について心理学からアプローチするのが産業心理学で、私たちの身近なところにもこの知識がたくさん採用されています。さまざまな商品の値段が心理的に設定されていたり、購買意欲を高める広告が産業心理学から作られています。