【1】
ハマる心理はビジネスに活かされている
消費者心理が一般的に知られるようになってからしばらく経ちました。こういった消費者心理を実際に仕事の営業等で実践してみて、お客様があなたの商品を買ってくれたとしましょう。
その消費者は購入後、またあなたの商品を買いに来るでしょうか?
確かに、心理学を使って消費者に商品を買わせることは一種の短期的な目標です。しかし、たくさんの時間と労力を使って得た顧客から、たった一度きりしか仕事をもらえなかったらどうでしょうか?
また顧客を探して契約までこぎつけるのに、これまでと同等かその倍以上の時間と労力を費やさなくてはいけないかもしれません。
1.1 – 顧客をハマらせる事ができれば売上収益は向上する!
ひとつ事例を見ていきましょう。
実際の研究で、新規ビジネスを獲得する為の費用は既存顧客を維持する費用の5倍かかるのに比べ、客離れを5%改善すれば25%の収益向上につながることが証明されています。
確かに消費者心理を勉強することは、お客様に商品を買ってもらうというビジネススタイルの上ではかなり有効的な戦略です。しかし、実際には一度商品を購入した人がリピーターとして購入してもらう事で初めて利益が生まれると言っても過言ではありません。
つまり、お客様が自社の製品・サービスにハマってもらうことが重要というわけですね。
1.2 – お客様にハマってもらうためのマーケティング戦略は基本
自社が販売している商品が、
- 他の同じような製品と比べて圧倒的な性能・品質を誇る場合
- 他の競合メーカーと比べて圧倒的な価格競争がある場合
稀なケースかもしれませんが、この様な競争力を持つ製品を保有している場合は、ほとんど商品の価値だけで勝負ができてしまいます。
しかし、現実を見てみると、純粋な商品の性能だけで勝ち続けている企業はほぼ存在しません。基本的にどこも以下のようなマーケティング戦略を実行しています。
- サービスの向上
- 顧客のロイヤリティを高める
- 徹底したアフターケア
- 問題の即時解決
どれもお客様を逃さないための基本的なワザですね!
でも、ここで問題となるのは、本当に基本的なマーケティング戦略ですので、どこの企業でも予算さえあれば確実に実行できてしまうことです。だからこそ考えなくてはならない事は、『より少ない資金で効果的に顧客を維持すること』 に他なりません。
1.3 – 効率的に顧客維持をするには『ハマる心理』の活用が重要
先に結論を言ってしまうのですが、少ない資金で効率的に顧客を維持するには 『購入したお客様がふたたび戻って来るメカニズムを“お客様の中に構築”してしまうこと』 なのです。
お客様の中に『ハマる仕組み』を作れた事例
『商品の購入が生活の一部になっているもの』 を考えてみましょう。
例えば、今日の夕食はカレーを作って食べよう!と思った時、ほとんどの人にとってスーパーに売っているルーを買うことがカレーを作る最初のステップではないでしょうか?
一見、大した事ではない様に思えますが、これが消費者の中でカレーのルーを買うことがカレーを作るのに必要なプロセスだというシステムが構築されている場合のモデルです。
しかしこれは、カレーのルーを販売する会社が長い年月と資金を投資し、消費者にルーの価値観を植え付けるマーケティングを行った結果であって、決して数年間で構築できるシステムではありません。
では、TwitterやFacebookに代表されるSNSはどうでしょうか?これらはスマードフォンの普及にともなって急激な発展をしましたが、多くの人にとってSNSをチェックすることが日課になっていることでしょう。これはカレーのルーのモデルと比べ、圧倒的に速くかつ安価に消費者の生活必需品として受け入れられました。
では、なぜSNSはこんなにも簡単に消費者へ “使って当たり前” と思わせることができたのでしょうか?
それは、カレーのルーのように消費者に新しい価値の創造させるではなく、商品にハマらせるという人間の摂理に則った心理学をうまく利用しているからなのです。
【2】
ハマらせる仕組みを構築する『ニール・イヤールのフックド理論』から学ぶ
人は “価値があるからハマる” のではなく、”ハマるから価値がある”と思いたくなる生き物です。
好きな漫画やアイドルに対して費やす時間とお金は痛くも痒くもないのはどうしてでしょうか?時間はお金では買えないのに人はtwitterやFacebookに1日で何時間も費やすのはなぜでしょうか?
これを、簡単に説明したものが、ニール・イヤールが提唱するフックド理論(HOOKED)です。フックド(=hooked)とは英語で釣り針に捕まった魚のように、もうどうしようもなくやめられない、完全にハマってしまった!!という一種の中毒性を表現しています。
2.1 – フックド理論が成立する条件とは?
フックド理論はまずトリガーから始まります。
あなたは気分がなんとなく落ち込んでいる時どうしますか?なんとかしてあげようと思いますよね?音楽を聴いたり、好きなものを食べに行ったり、気分転換に美容院もいいかもしれません。
実は、これは感情があなたを動かす要因になっていることを示す良い例なのです。
特にネガティブな感情、例えば、
- 暇だ
- つまらない
- 寂しい
- 悲しい
- 疲れた
といったものがありますが、これらを改善するための行動を起こすきっかけ(トリガー)となります。
2.2 – 内因的トリガーと外因的トリガー
内因的トリガー
実際にうつ病の症状がある人は、メールをチェックする時間が増えるという研究があります。これは、メールをチェックすることで”うつ”になっているというものではなく、メールをチェックすることで外からの繋がりを意識し”うつ”を改善することを期待したための行動なのです。このような自分の内面を発生場所とするトリガーを『内因的トリガー』と言います。
外因的トリガー
もちろん、外因的なトリガーもあります。
例えば、動画の最後に出る“次の動画を再生するボタン”。ウェブサイトが視聴者に次の動画を見ることを指示しているのです。もちろん、何時間もパソコンの前に座っているのにもかかわらず、視聴者はこのボタンをクリックし次の動画を見てしまいます。これが外因的トリガーから行動を促された場合です。
2.3 – 人が行動に移す(ハマる)時の3つの条件
内面的、外面的なトリガーによって引き起こされた
- 行動したい!
- 行動しよう!
という気持ちは、次に、実際に行動するかどうかを判断するという段階に移ります。
ちょっと気分が落ち込んでるから好きな映画のDVDでも借りて見よう、と思っても、レンタルビデオ屋さんが自宅から遠い場合、やっぱり面倒くさいからいいやと思ってしまいますよね?これが、インターネットで簡単にダウンロードできるのであればいくらでも気分を晴らせるでしょう。
人が 「行動しよう」 と思ったとき、実際に行動するかどうかは以下の三点で決定 されます。
- モチベーション(意欲)
- アビリティ(能力)
- リワード(報酬)
その行動に対するモチベーション(意欲)が高いほど、人は行動しやすくなるのは理解できるかと思います。
どんなに意欲が高くでも人は”自分が出来そうにない事”は行動にうつせない
次に人は自分にできるかどうかをよく考えます。
どんなにモチベーションがあっても、あまりにも無理難題な行動は現実的に成功する可能性が低いです。自分に出来そうにもなければ、人はそれを実践することはありません。
当然のことですが、その行動に関するモチベーションが高く、かつ難易度が低い行動であれば人はそれを実践に移す傾向が高まるのです。
人快楽や幸福などの”報酬”はハマる重要なポイント
次の大きなポイントが報酬です。報酬と言うと 『お金』 を想像してしまいますが、それだけではありません。私達の脳にとって 快楽として認識されるもの、または幸せだと感じさせるもの です。例えば、甘いもの、SEX、運動等です。 その性質は大きく以下の3つに分かれます。
- トライブ(集団)
- ハント(狩猟)
- セルフ(自己)
トライブ型(集団)の報酬とは
トライブ型の報酬とは、「自分が他者に認められている」「集団に重要である」と認識され受け入れられているというものです。例えば、FacebookやInstagramなどで自分の投稿に “いいね!” がついた時の満足感がそれです。
ハント型の報酬とは
ハントとは報酬を探求することで得られる快感です。twitterではすべての情報が自分に興味があるわけではありませんが、すべてのツイートを一通りスクロールしていくことで、いくつか面白い記事やネタを発見することができます。
セルフ型の報酬とは
セルフとはその名の通り自己満足。自分の成長に対しての達成感です。ゲームで自分のキャラのレベルを上げることの快感やテストの点数が上がった時の喜びというったものが当てはまります。
【3】
人はハマると簡単に抜け出せなくなる —— それがビジネスの仕組み
これまで説明したドライブ型・ハント型・セルフ型のどの種類の報酬であっても、報酬の量が大きければ大きいほど、人間はそれを得るために行動することを惜しみません。ギャンブルでも賞金が大きければ大きいほど人は興奮し、やってみたいという気持ちになります。
実際にトリガー(きっかけ)が作動し報酬が期待できる行動をする。ここまで来てしまえば最終ステージ、投資段階に消費者は知らぬ間にたどり着いています。投資とは、消費者が商品に対して金銭だけではなく時間と労力を投資している状態のことを意味します。
例えば、好きなアイドルに会うためのライブの時間やグッズの購入代金とは別に、そのミュージックビデオを見る時間等考えると、この段階まできた消費者はもう自分の持てる体力(資金力、労力、時間)の大部分を商品につぎ込んでいる事になります。
この先には何があるでしょうか。すでに一度商品によって引き起こされた快楽を覚えた脳は次のトリガーに簡単に反応します。パブロフの犬と同じですね。
さらに、トリガー・行動・報酬・投資のループを繰り返せば繰り返すほど、人は自分の費やした時間と労力を無駄にしたくないと思うものです。結果として、何らかの強力な作用がその人の生活を変えない限り彼らは永遠にループし続けるのです。言い換えれば、それが起きるまでは人はそう簡単に顧客であることをやめることができません。
【4】
最後に
ここに示した人をハマらせるモデルは最近人々の間で急速に人気が高まるSNSが利用している心理的作用を分析したものです。もしあなたが顧客維持のためにこれに近い戦略をとることを考えているのであれば、自分が何にハマってしまうかを考え、このフックド理論にどのようにあてはまっているかを分析すると良いでしょう。
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