犯罪心理学を知れば罪を犯す人の気持ちを理解できるのか?

テレビや新聞などで報じられる凶悪犯罪を犯す人は、一体どんな人なのだろうと考えたことが誰でもあるかと思います。何か特別な人というイメージがありますが、実際にはどこにでもいる近所のお兄さんが犯人だったというケースも多くあります。

応用心理学の一つに分類される 犯罪心理学 は、罪を犯す人の特性や環境要因を解析する犯罪を検証する学問です。

犯罪心理学とは?

殺人や強盗、詐欺などの凶悪な事件や犯罪のニュースは毎日のようにテレビや新聞などで報道されていますが、日本では大抵のケースで犯人が逮捕されています。

犯人逮捕のための捜査では、事件に関わるあらゆる証拠を集めると同時に犯行の全体像についても把握する必要があります。犯行の全体像を掴むためには犯人がどのような目的で反抗に及ぶことになったのか犯人の意図を正しく把握することが大切です。そうしないと犯行の全体像もあいまいになり犯罪捜査がなかなか進まなくなります。

捜査では警察はもちろん犯行に関わりがある各分野の専門家たちの知識も必要不可欠になるのですが、そこで犯罪心理学も活用されています。犯罪心理学からの視点や知識、データの提供は犯罪捜査においてはとても重要で、これは警察官にはない知識です。

犯人の特徴や環境的な要因を解明して犯罪捜査や犯罪予防に役立てるための学問が犯罪心理学 で、犯罪を検証するための学問と言うこともできます。

犯罪心理学の目的

犯罪心理学の目的は犯罪捜査や犯人逮捕だけでなく、犯罪のない社会作りや犯罪者の更生にまで及びます。どうして犯人が犯行に及ぶことになったのか深層心理を追及するのが犯罪心理学で、そうすることで同じような犯罪が二度と起こらない社会にしていこうとする目的もあります。

犯罪を減少させるためには、犯罪者の更生も必要です。多くのケースでは犯罪者は罪を償った後に、社会復帰をします。二度と同じような過ちを犯すことがないよう心理的なサポートをして、更生へと導いていくことも犯罪心理学の大きな役割となっています。犯罪心理学は一つの犯罪全てに関わるとても重要な学問で、犯罪精神学犯罪社会学刑事政策などと研究テーマが重なる部分も多いです。

犯罪心理研究の歴史

今では犯罪捜査に欠かすことのできない犯罪心理学ですが、その基礎を作ったのはイタリアの精神科医である チェーザレ・ロンブローゾ です。また精神分析の創始者であるオーストリアの有名な精神科医である ジークムント・フロイト も、犯罪心理学の底上げに貢献したと言われています。

チェーザレ・ロンブローゾは軍医としての経験もあり精神科医としては犯罪者の人格について研究を進めていきますが、主に犯罪者の遺伝的要因について研究しています。犯罪者の人格や遺伝的要因についての研究は、20世紀になってからの社会学的、生物学的な側面からの人格分析へとつながっていきます。

軍医と精神科医の経験から、彼が解剖した頭蓋骨の数は800以上にも及びさらに8,000人以上もの受刑者の容姿研究を行っています。兵士からのデータと受刑者からのデータを比較した上で彼は、人間は先天的に犯罪の素質を持っているという生来的犯罪人説を唱えるようになりました。

犯罪者の特徴が分かる?

生来的犯罪人説を提唱するチェーザレ・ロンブローゾは、犯罪者の遺伝的要素を表す外見や精神的な特徴を挙げています。犯罪者の特徴として挙げられるのは下記の通りです。

犯罪者の特徴
  • 頭部が大きめである
  • 顔の左右が非対称である
  • 左利きである
  • 独創的である
  • 自己中心的である

外見的な特徴として頭部が大きめで顔が非対称、左利きという特徴を挙げ、精神的な側面での特徴として独創的で自己中心的であることを挙げています。

もちろん、これらの特徴があるからと言って、犯罪者になりうる可能性が高いというわけではありません。現在の犯罪心理学ではもっと複雑な側面が絡み合っていることが分かっており、ロンブローゾがこの特徴を提唱した当時でもたくさんの学者から非難の声が上がっています。

しかし、このロンブローゾの研究が犯罪心理学の基礎となっているのは確かで、それから犯罪者の人格分析がされるようになり、またフロイトの精神分析によりレベルも底上げされることになりました。

誰もが犯罪者になる可能性がある?

ニュースや新聞で報道される犯罪を目にしても、多くの人は他人事で、自分には無関係な事とそれほど気にしないのではないでしょうか。多くの人が特に大きな犯罪に巻き込まれることもなく、ましてや自分が犯罪の加害者、つまり犯罪者になろうとは想像もしていないでしょう。交通事故や自然災害などの被害に遭うという被害者意識を持つことは想像できますし、身近にもそんな人がいることも多いですが、犯罪者とは無縁だと思っている人が大半かと思います。

犯罪者の特徴や環境的な要因を解明していくのが犯罪心理学ですが、やはり 犯罪者の気持ちは理解できない という人が多いでしょう。生来的犯罪人説もありますが、実際に犯罪者の子供もまた犯罪者になってしまうというケースは多く、これは遺伝子レベルが関係しているというよりも、育った環境による要因が大きいようです。

人格が形成されるまでの子供にとって最も影響力があるのは身近な大人で、多くのケースでは親が一番大きな影響力を持つことになります。反面教師という言葉もありますが、やはり大抵は親の背中を見て同じように子供は育つものなので頻繁に暴力をふるう父親の姿を見て育った子供はどうしても暴力的になります。遺伝子レベルの問題ではなく環境による問題なので、これは環境が悪ければ誰もが犯罪者になる可能性があるということでもあります。

こういった話を聞くと、『犯罪者の多くが暴力的な荒んだ家庭で育ったのだろう』 と想像しますが、実際には多くの犯罪者がごく普通の家庭で育っていることも事実です。ごく普通の近所のお兄さんが凶悪犯罪を犯してみんながびっくりしているというニュースをよく目にしますが、このように家庭環境だけが問題であるとも言えないのです。また同じように育てられた兄弟姉妹でも、その中の一人が犯罪者になるケースもあります。

犯罪に至る心理を形成するまでには実にさまざまな原因があり、誰もが何かしらの要因で犯罪に走る可能性があることを知っておいた方が良いでしょう。

サイコパス

人が罪を犯す原因は家庭環境をはじめとしてさまざまな要因が考えられるのですが、凶悪犯罪者の中にはサイコパスと言われる人も多いといわれています。サイコパスとは精神病質とも言われ、正常とされる人格から逸脱した人のことを指します。

犯罪心理学者である ロバート・D・ヘア はサイコパスの特徴として、良心が異常に欠落していること他人に冷たく共感することがなく慢性的に平気で嘘をつくこと などを挙げています。また、自分の行動に対しての責任感が全くなく罪悪感も皆無で、口達者なので表面的にはとても魅力的に見える という特徴があるとしています。

極端な冷酷さや無慈悲、感情の欠如などが特徴として挙げられるサイコパスですが、この特徴があっても反社会性がなければサイコパスとはなりません。サイコパスの特徴を持つ人が凶悪犯罪を犯すこともあり、そのようなケースではとても一般の人は犯人の気持ちを理解することや想像することもできないでしょう。しかし、犯罪心理学がそのような不可解と思われる犯罪捜査にも役立てられています

犯罪心理学では殺人や詐欺などを犯す犯罪者の心理や犯罪のタイプ別の心理なども学んでいきます。いくら犯罪心理学を学んで犯罪者の気持ちを理解するのは難しいでしょうが、その知識が犯罪捜査に役立てられています。