受容とは?心理カウンセラーはなぜ自分の意見を言ってはダメなの?(カウンセリング技法)

友人から悩みを相談されると、大体は 「●●を▲▲したら良いんじゃないかな?」 とアドバイスするのではないでしょうか。

しかし心理カウンセリングの場では、アドバイスや意見は原則として言いません。カウンセリングは、相談者自身が問題の答えを導き出すことを目指しています。そのために受容が大切なのです。

『なぜ心理カウンセラーは自分の意見を言わないのか?』 ということを通じて、『カウンセリングにおける受容とは何か?』について解説していきますので、スキルアップに役立ててみてください。

 

[1]
心理カウンセリングにおける受容とは?

心理カウンセリングに於いて、『受容』は基本とされる姿勢であり、受容とは『相手をありのままに受容れる』ということになります。でも、心理カウンセラーは賛成も反対もしません。思い悩む相手を受容れるだけです。

チョット判りにくいと思いますので、事例をご紹介しながら説明していきます。

あかね
義母が教育方針にまで口を出して、家庭をかき乱されてたまったものじゃない。自分の考えを一方的に押し付けてくるし、頭にくるわ!
心理カウンセラー
そうですよね、教育方針に口出しすべきじゃないですよね。一方的に押し付けられたら頭にきますよね。嫌になるのもわかります。

この会話の中で、確かにBさんはAさんを受け容れています。しかし、友人関係ならこれでも良いのですが、カウンセリングの場ではNGの事例になります。

あかね
義母が教育方針にまで口を出して、家庭をかき乱されてたまったものじゃない。自分の考えを一方的に押し付けてくるし、頭にくるわ!
心理カウンセラー
なるほど。教育方針に口を出したり、考えを一方的に押し付けられると嫌な気持ちになるのですね。

 

この違いが、おわかりでしょうか?

先の事例は、相手の考え方に賛同しています。後の例は、賛同も反対もせず、「嫌な気持ちになる」 ということを認めています。賛成も反対もせずに、頭に来るAさんを受け容れますよ というのが、カウンセリングで言う「受容」です。

相手を「受容する」のと、相手の行為や考え方に賛同するのは違うのです。ありのままに受容する、というのはそのように感じたあなたを受け容れますという事なのです。

 

もうひとつ、別の事例を挙げます。

例えば、万引きを強要されて悩む生徒がいたとします。悩んでいる事は受容れるけれど、万引きという行為は犯罪です。犯罪行為を受容れるわけには行きませんよね。

しかし、万引きした本人を否定してしまうと、心を閉ざして先に進めなくなってしまう可能性があります。そうなると、どうしたら良いのかの解決を考えることが難しくなります。つまり、問題解決に立ち向かうためには、まず受容を行っていく事が大切なのです。

 

[2]
なぜ、心理カウンセラーは意見を言ってはいけないのか?

親しい友人や会社の後輩から、「○○で悩んでいるんです / 困っているんです」 と相談されると、つい 「こうすれば良いんじゃない?」とアドバイスを言ってしまいたくなるのではないでしょうか?

しかし、相談者と友人や先輩後輩の関係では無い心理カウンセラーは、決して意見やアドバイスを言いません。大きな理由としては2つありますので、次から解説していきます。

2-1. 自分を受け容れてもらえるという信頼感が何より大事

人は自分の気持ちを理路整然と言葉で表せるわけではありません。むしろ言葉に出てくるのは氷山の一角でしかなく、断片的であることも多いのです。相談者は、心の悩みに至るまでに長い時間や根深い問題を抱えています。それは相談者本人にしか判らないことで、心理カウンセラーは簡単に真実を見ることはできないのです。

また、相談者が語る言葉が本心ではない場合もあります。「こんなことを言ってはいけないのではないか?」と気を使ったり、言いにくいことはなかなか言葉に出せないものです。これは自分に置き換えてみると判るのではないでしょうか?他人に悩みを話す、本心を話すというのは、とても難しいものです。

充分に話もできていないのに意見など言われると、「私のことを良く知りもしないのに!」と反感を覚えることもあります。相談者は、言葉では○○と言ったけど、実は本心では迷っているという事なども沢山あります。

その段階で心理カウンセラーから相談者へアドバイスをすると、相手の迷いや考えを遮ることになります。

『アドバイス』 というのは見方を変えると、Aの考えでなくBはどう?と相手の考えを否定したり誘導することにつながります。ですから、相談者が「自分は受容れられていない」と感じている状態では、素直に気持ちを話せないものなのです。

つまり、心理カウンセリングでは、カウンセラーが傾聴などの心理技法を用いて、相談者自身が「自分を受け容れてもらえる」と感じさせ、信頼感を生み出す事が何よりも大切なのです。

2-2. アドバイスや意見は、本当の意味での援助にならない

人は、迷っているときに善意でアドバイスをしてくれると、背中を押されたように勇気付けられます。例えば、服を選ぶ時は、それで決心がつくということもありますが、心理カウンセリングの場では相談者の考えに影響を与える事となります。

心理カウンセリングでは、相談者自身が考え、問題に向き合うことで、自ら解決への答えを見出せるように援助するのが心理カウンセラーの役割です。したがって、相談者自身が答えのヒントに気付き、内側から変わっていくことがカウンセリングの目標です。

食べ物がなくて困っている人に、食べ物をあげることはできます。しかし、それでは食べて空腹を満たしてしまうと、またお腹が空くまで時が過ぎるだけで何の変化もありません。

本当の援助とは、食べ物を手に入れる手段を身につけるようにサポートする事だとは思いませんか?

心理カウンセリングは、解決への力を身につけるための援助です。アドバイスや意見は本当の意味での援助にはならないという考え方の下で活動を行っていくのです。

ただし、例外として、医療機関の対応が必要な場合や、他機関の協力が必要だと心理カウンセラーが判断した場合は、その旨を相談者へアドバイスは行います。

 

[3]
受容はなぜ難しいのか?

心理カウンセリングでは、『受容』することが大切だと書きました。しかし、相手をありのままに受容れるというのは、とても難しいものです。

心理学の基礎知識になりますが、カウンセリングの基本になっている考え方が、カール・ロジャースの「来談者中心療法」です。

ロジャースは、カウンセラーに求める資質として3点挙げています。

① 自己一致

あるべき自分と、現実の自分が一致していること。

② 無条件の肯定的受容(理解)

相談者を人間として無条件に認め、批判しないこと。

③ 共感的理解

相談者の立場を自分のこととして感じ取り、理解すること。

 

この記事のテーマは『受容』ですので、②の「無条件の肯定的受容」に関連して述べていきます。

心理カウンセラーは、相談者に対して批判的な事を口にする訳がありません。当たり前ですね。しかし、心理カウンセラーも聖人君子ではありませんから、相手の話に対して、何らかの反応や気持ちが起こるのは当然のことです。

そもそも人間は、本能や生育歴や生活環境の影響を受けており、無意識領域での定型的な反応や判断の部分がとても多い生き物ですから、心理カウンセラーも相談者も例外ではありません。

心理カウンセラー自身の無意識領域が、相談者の話を聴いて全て肯定的に捉えるか?と言うと…それは疑問です。心理カウンセリングの場で、「本当はそうは思わないけど・・・」 というケースは往々にしてあります。それを理性の力で肯定的に捉えようと努力するわけです。

「無条件の肯定的受容」は、カウンセラーの中で無意識と意識の葛藤を生み出すといえるでしょう。この葛藤に理性が負けてしまうと、「なぜ、万引きが断れないの?」などと思わず口に出てしまいます。この段階で、相手を否定しているのです。

この言葉の裏には、

<万引き 断るべき 断らないあなたが悪い>

という定型的な無意識の判断が働いています。本当であれば、万引きを断れない自分や、罪悪感に悩んでいることを受容すべきなのです。これが、無条件の肯定的受容の難しさなのです。

 

[4]
まとめ

心理カウンセリングにおける受容とは、批判をせずに、相手をありのままに受容れるということです。相談者をありのままに受容することで、相談者は「自分はこれでいいのだ」と自分自身を認めることができます。

心理カウンセリングでは、意見やアドバイスを言うことは、相談者の考えを否定したり誘導することにつながります。心理カウンセリングでは、相談者が 「自分が無条件に受容れられている」 という信頼感を構築する事がとても大切です。

ですから、相談者自身が問題に向き合い、解決のヒントに気付くように援助するのが心理カウンセラーの役割です。そのために、心理カウンセラーは意見やアドバイスを言うことはありません(例外を除いて)。

この様な心理カウンセリングの場にて、「無条件の肯定的受容」は、心理カウンセラーにとっても難しいことです。心理カウンセラーは、批判せずに相手の心に寄り添う理性が求められます。