心理学と一口に言ってもさまざまな種類があり分類方法もさまざまなで、初めての人は何が何だか分からなくなる人もいるでしょう。
ここでは応用心理学の種類とその具体的な内容についてご紹介してきますが、応用心理学の理解を深めるという意味では 基礎心理学について のページからご覧になる事をおすすめします。
1. 応用心理学って何?
応用心理学とは、 様々な角度からの心理学的な研究結果をもとにして、社会問題の解決など実用的な分野へと応用していこうとする心理学 のことを指します。
後述しますが、心理学は広く 基礎心理学 と 応用心理学 に分類されます。その中でも応用心理学の位置付けは、心のメカニズムや原理を科学的に解明する 基礎心理学を応用して社会に役立てていく学問 になります。
『心理学』の言葉が指す範囲はとても幅広く、人の性格や発達、成長していく段階を研究して法則を明らかにしていくような心理学から、その法則を踏まえて各専門分野でより詳しい研究をする心理学もあります。
人の心を研究するのが心理学ですが、その種類や分類の仕方はとてもたくさんあって簡単に説明できるものではありません。
しかし、広い意味で心理学を分けると、 基礎心理学 と 応用心理学 という2つのグループに分けることができますので、次章からはこれらの違いについてお伝えしていきます。
2.応用心理学と基礎心理学の違い
1章でも述べた通り、 応用心理学は基礎心理学を応用して社会に役立てていく学問 であり、より実用的な分野に心理学の研究で得られた法則を応用していくことによって、現実の社会がより良くなるよう役立てていきます。
それでは、 基礎心理学と応用心理学の違いは何 でしょうか?
基礎心理学は、応用心理学に対して基礎的な心理学の研究を行う分野です。心理学の基礎となるのが基礎心理学で、例えば人はどのように発達、成長するのかや、人は集団の中でどのように行動するのか統計を取り、傾向を見るなど基礎的な知識を扱います。
ただ誤解してはいけないのが、 応用心理学に対して基礎心理学が初歩的、または簡単な学問と捉えるのは間違い ということです。
基礎心理学は、人の心の 普遍的な法則 や 構造 などを研究して明らかにしていく学問となり、 基礎心理学の知識や理論を、より実践的に当てはめていくのが応用心理学 という位置付けになります。
つまり、基礎心理学が 『研究・理論』 であるのに対して、応用心理学では 『応用・実践』 に当たるわけですから、それぞれが独立して重要な学問であると言えるのです。
3.応用心理学の種類について
基礎心理学で得られた法則や理論を実用的により社会の問題に役立てていくのが応用心理学なのですが、この中にも実に様々な種類があります。
普遍的な法則を研究する基礎心理学とは違い、社会集団の中での個人に視点を置いて研究をしていくのが応用心理学であり、 代表的な応用心理学の種類 は下記になります。
- 教育心理学
- 認知心理学
- 臨床心理学
- 犯罪心理学
- 産業心理学
- 災害心理学
- 環境心理学
- スポーツ心理学
- 動物心理学
それでは、各心理学についてみていきましょう。
3-1.教育心理学とは
基礎心理学を教育の場で応用し、 教育課程における子供の成長や人格形成、集団生活をする子供同士の関係性や子供と教育者との関係性などを研究していくのが教育心理学 です。
心も体もまだまだ未発達の子供は日々さまざまな変化をし、成長していますが、より健全に成長できるようサポートするための方法や技能を学んでいきます。
教育心理学では主に乳児期から青年期までを対象としており、教育がいかに人の心や知能、人格形成に影響を与えるか、また関係性を研究してより有効な教育方法を探っていきます。
日本での教育心理学の歴史は古く 日本教育心理学会 もあります。
日本教育心理学会は,教育心理学に関する研究成果の発表を促進し,その発展に寄与することを目的とした全国的な学術団体です。(中略)毎年,会員の研究発表のための総会や,公開シンポジウムを開催するなど,教育心理学の研究水準を高め,その成果を広げるための様々な活動をおこなっています。
教育心理学は特に教師には欠かせない知識で、子供の理解を促したり、教師と生徒との関係性を良好にしていくためにも役立つ学問となります。
3-2.認知心理学とは
人がある特定の対象物を認識する際には、それまでの記憶や学習による知識などのさまざまな情報処理能力が働いているのですが、その過程がどのようになっているのかを明確にしていこうとするのが認知心理学です。
私たち人間は見る、聞く、触るなど五感を使って、目の前にある物が何であるのかを理解することができています。
五感で得られたさまざまな情報が脳に送られそこで情報処理が行われることで、目の前にある物がパソコンである、ミカンであるなどと正しく判断することができます。
このように人は無意識のうちに、あらゆる物事を絶えず知覚して理解して判断しているのですが、この情報を収集するための活動のことを認知と呼んでいます。
一般的に認知は認識と解釈されることが多いのですが、いずれにしても人は感覚や知覚、記憶など、これまでの経験で得られた情報に基づいて判断して行動を起こしています。
その経験がさらに新しい記憶となって新しい経験を生み出しているですが、このように人間が認知によってどのように思考し行動しているのかを研究するのが認知心理学です。
認知心理学では主に記憶の研究をメインに、五感などの知覚や理解や判断などをテーマにして研究が進められています。
3-3.臨床心理学とは
臨床心理学は精神医学や精神病理学との関わりが深い心理学で、精神面での健康をテーマにした心理学の一つです。
ストレス社会と言われる現代人にとってこの認知心理学はとても重要な学問の一つで、基礎心理学である人格心理学や発達心理学が応用されています。
精神的な健康状態を維持するためや精神疾患を持つ人をサポートすることを目的とした学問です。
精神疾患で苦しんでいる人に対して心理療法やカウンセリングを行って、その苦しみを取り除くためのサポートをする臨床心理士などは、臨床心理学は必須の学問となります。
人は誰でも生活していく中でさまざまな困難にぶち当たり、大きな悲しみや苦しみを感じる場面があります。
自分で乗り越えられることもあれば、家族や友達などの周囲の励ましなどでその問題を解決することができることもあるでしょう。
しかし、それでは乗り越えられないほどの大きな苦しみや問題に直面することもあり、なかなか気持ちを切り替えることができず長期間悩みや苦しみを抱えるようなときに役立つのが臨床心理学です。
臨床心理学の知識をもとにした心理療法やカウンセリングによって、悩みを抱える人をサポートしていくことができます。
仕事や人間関係でのストレスから、うつ病や統合失調症などのさまざまな精神疾患まで、幅広い心の悩みや問題を解決に導くためのサポートができるのが臨床心理学です。
精神医学と同じような扱いをされることが多い臨床心理学ですが、精神医学を学んだ精神科医のように薬物療法はできません。
臨床心理学の専門家である臨床心理士は、あくまでも心理療法やカウンセリングを通じて人間の心のケアを行っていきます。
3-4.犯罪心理学とは
犯罪心理学は比較的新しい領域の心理学であり、罪を犯した人物の特徴や環境的な原因を解析して、その後の犯罪の捜査と予防に役立てることを目的としている学問 です。
時代とともに犯罪もより複雑化していますし、より凶悪な犯罪も増えていますが、そのような犯罪を予防するために生まれたのが犯罪心理学です。
犯罪捜査では犯行の全体像をつかんだり証拠集めをしたり、犯人の目的を把握したりと、さまざまな角度からのアプローチが必要になってきます。そのためには警察関係者はもちろんさまざまな分野の専門知識が必要不可欠で、その中で犯罪心理学の知識や視点もとても重要な要素となります。
犯人逮捕はもちろん犯罪を予防したり、犯人の再犯防止のためにも犯罪心理学は重要な役割を担っています。
4.応用心理学のまとめ
- 応用心理学は基礎心理学を応用して社会に役立てていく学問
- 応用心理学の代表的な学問には、教育心理学・認知心理学・臨床心理学・犯罪心理学・産業心理学・災害心理学・環境心理学・スポーツ心理学・動物心理学 などがある
- 精神疾患などのメンタルヘルスを対象とした心理カウンセラーを目指すのであれば、臨床心理学を学ぶのは必須
応用心理学の種類は実にさまざまで、教育現場や犯罪捜査までさまざまな場面で実用的に心理学が当てはめられています。基礎心理学の理論がさまざまなシーンで実践的に活用され、より良い社会になるよう応用心理学が活用されています。