相談業務とはどんな仕事? – 相談員の仕事内容

相談業務は援助の一環で、その業務にあたる人を相談員と言うことが多くなっています。相談業務は、職種・対象によって範囲や内容が違い、相談員の呼称もいろいろです。また、それぞれの分野の知識が必要になります。

ここでは心理学に隣接するような分野(福祉、教育、医療、産業)を中心に、相談業務とはどのような仕事なのか? ―― 業務の種類や概要をご紹介します。また、相談員と心理カウンセラーとでは何が違うのか?も併せて解説していきます。

【1】
心理カウンセラーと相談業務をする相談員との違い

心理カウンセリングも各種の相談業務も『援助する仕事』です。相談業務をする場合に、傾聴やカウンセリングの技術は大切です。しかし生活相談員などに代表される”○○相談員”の相談業務は心理カウンセリングとは少し違います。

①心理カウンセラーの場合

原則として、カウンセラーが意見やアドバイスを言うことはありません。相談者自ら問題解決ができるようにコミュニケーションによって気付きを促し、援助する役割です。またカウンセリングをする場所(カウンセリングルームなど)以外では、相談者と関ることはほとんどありません。

これは、『二重の関係性を避ける』というカウンセリングの基本があり、客観的な立場を保つことが求められます。

②○○相談員の場合

相談者の状況や要望を聴くのが入口で、ここで傾聴やカウンセリング技術が求められます。この段階は、相談者が抱える問題を把握したり整理するのが目的です。次の段階で問題解決に向けての具体的なアドバイスや手続き、他機関との調整をします。職種や施設や規模によって、相談業務の内容も大幅に異なります。

③心理カウンセラーと相談員では問題解決の方法が違う

『悩みを抱えている人の援助』という姿勢は同じですが、心理カウンセリングと”相談業務”は問題解決の方法が違います。

心理カウンセラーの場合は、心の問題を扱い、心理学の知識とコミュニケーションによって解決に導きます。心理カウンセラーは業務のほぼ100%が相談です。

しかし、相談員の場合は心の問題だけでなく、相談者の抱える問題をさまざまな制度やサービスを利用して援助します。ですから、相談業務がすべてではなく、他の手続きや調整・連絡などの比重が高くなります。まずは、ここを押えておきましょう。

【2】
各分野における相談業務の種類や概要

それでは、相談業務にはどのような種類があるのでしょうか? ―― 教育分野・福祉分野・医療分野・産業分野に分けて紹介していきますが、これらの分野でも援助を必要とする対象者によって相談窓口が違います。相談者の抱える問題は様々で、解決していく為には各分野の機関と連携して対応をしていく必要があります。

①教育分野の相談業務

教育分野では、

  • 教育相談
  • 発達相談
  • 児童相談
  • 学習支援相談
  • 進路相談
  • 就学前相談

などがあります。

相談の場・窓口としては、学校・教育センター・教育委員会・児童相談所・保健所・自治体が別途開設する相談窓口などです。

①-1. 教育相談室などで行う相談業務の種類・概要

自治体が開設する教育相談室や教育センター、教育委員会が設ける相談室等があります。相談室によって扱う内容は違いますが、主に以下のような相談業務を行っています。

不登校相談

不登校児童と保護者が対象です。家庭訪問が必要な場合は訪問することもあります。必要に応じて適切な施設を紹介します。

就学相談

視覚・聴覚・言語など就学困難な状況についての相談や援助を行います。また、発達面での相談・検査・査定、家庭状況の相談などにも関ります。必要に応じて、適切な機関を紹介します。

障害児相談

障害の種類や程度に応じて必要な援助をします。サービス利用の手続き、障害児通所支援の助言や障害児支援利用計画の作成などをします。

発達相談

発達障害や、その心配がある児童、保護者を対象に援助をします。発達検査や心理検査が必要な場合は、専門機関を紹介します。

子育て支援センターや発達支援センター

乳幼児・児童の言語、その他の発達相談に応じます。必要に応じて療育機関の紹介・手続きなどの手配をします。

①-2. 学校などの教育機関で行う相談業務|スクールカウンセラー

多くの公立小中学校、高校では児童生徒の心理相談業務にあたるスクールカウンセラーを配置しています。スクールカウンセラーは、週に1~2回担当の学校に派遣され、相談業務にあたります。

いじめや不登校、発達障害による学習困難、問題行動など、さまざまな問題に心理学の専門知識を用いて対応します。児童生徒への心理カウンセリングや、保護者・教員への助言やコンサルタントも行います。他の機関との連携が必要な場合は、情報提供や調整を行います。児童が不登校の状態にある場合などは、家庭訪問を実施したりもします。

なお、スクールカウンセラーになるには学校心理士の資格を取得する必要があります。

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①-3. 児童相談所で行う相談業務

児童相談所は、児童福祉法に基づき、都道府県や政令指定都市などに設けられた児童福祉の専門機関を指します。18歳未満の児童について、家庭や学校からの相談に応じます。児童相談所で心理判定や心理療法などの心理職にたずさわる職員のことを『児童心理司』と呼びます。

児童相談所で行う相談業務は、

  • 養護相談
  • 心身障害相談
  • 非行相談
  • 育成相談(不登校や性格行動相談など)
  • 保健相談
  • その他

があります。

必要に応じて、心理検査や判定、療法などを行います。虐待などの問題も増えており、保護者への助言指導、他機関との調整などをします。

児童相談所には

  • 相談機能
  • 一時保護機能(一時預かり)
  • 措置機能(入所~保護受託者に委託)

これらの機能がありますが、児童相談所の判断で他の適切な児童福祉施設などを紹介します。

①-4. 教育分野で相談業務を行うために必要な資格

教育分野の相談業務の場合は、心理職としての専門知識が求められることが多いでしょう。その上で、問題解決のための対応をします。相談員として任用される場合は専門知識が求められるので、臨床心理士・臨床発達心理士の有資格者がほとんどです。

児童相談所の心理職(児童心理司)として正規職員になるためには、各自治体の公務員採用試験に合格することが必要です。しかし、欠員や長期休業の職員が出た時など、非正規の嘱託や非常勤で募集する場合もあります。

 

②福祉分野の相談業務

福祉分野の相談業務では、

  • 福祉相談
  • 障害者相談
  • 児童・母子相談
  • 家庭相談
  • 自立・就労相談
  • 介護相談

などがあります。

また、これら社会福祉について相談をする場所や窓口としては、

  • 福祉事務所
  • 社会福祉協議会
  • 障害者支援センター
  • 地域包括センター
  • 母子家庭センター
  • 就労自立支援センター

など、さまざまな場があります。

福祉分野は大きく分けて、

  • 児童・母子福祉
  • 障害者福祉
  • 高齢者福祉・介護
  • 生活全般

と、対象も問題も非常に幅広くなっています。

それでは、それぞれの窓口での相談業務について内容をみていきましょう。

②-1. 福祉事務所での相談業務

福祉事務所は、社会福祉法に規定される「福祉に関する地方公共団体の事務所」となっており、各都道府県、市に設置が義務づけられています。福祉6法に定める援護・育成・または更生の措置に関する事務や手続き・調整・連絡などを行い、福祉の総合窓口と言えます。

福祉6法それぞれへの対応業務は下記の通りとなります。

 icon-file-text-o 生活保護法

生活困窮者の相談や、生活保護の実施に関る業務をします。家庭訪問調査や聞き取り面談、生活指導などを行います。

外部サイト icon-arrow-circle-o-right 『生活保護法』の全文

 icon-file-text-o 児童福祉法

児童・家庭に関る相談業務を行います。児童に関る問題であれば、児童相談所や児童養護施設などを紹介します。

外部サイト icon-arrow-circle-right 『児童福祉法』の全文

 icon-file-text-o 母子及び父子並びに寡婦福祉法(かふふくしほう)

単親家庭や寡婦に関る相談業務を行います。その上で、母子支援施設や保育所の紹介、手続きなど生活支援援助をします。

外部サイト icon-arrow-circle-o-right 『母子及び父子並びに寡婦福祉法』の全文

 icon-file-text-o 老人福祉法

高齢者福祉に関る相談業務を行います。老人施設への入所や、福祉サービス利用に関する情報提供などを行います。

外部サイト icon-arrow-circle-right 『老人福祉法』の全文

 icon-file-text-o 身体障害者福祉法

身体障害者福祉に関る相談業務を行います。障害者手帳の手続きや施設の入所、医療給付についての相談などを行います。

外部サイト icon-arrow-circle-right 『身体障害者福祉法』の全文

 icon-file-text-o 知的障害者福祉法

知的障害者福祉に関る相談業務を行います。障害者手帳の手続きや施設の入所、就労自立支援の情報提供や施設の利用についての相談などを行います。

外部サイト icon-arrow-circle-o-right 『知的障害者福祉法』の全文

②-2. 児童福祉施設での相談業務

児童福祉施設には、

  • 乳児院
  • 児童養護施設
  • 母子生活支援施設
  • 児童家庭支援センター
  • 児童発達支援センター
  • 児童自立支援施設
  • 児童厚生施設

などがあり、児童相談所福祉事務所で、必要に応じて各施設の紹介を行っていきます。

なお、児童相談所には、医師・看護士・臨床心理士(児童心理司)・児童福祉士・保育士などさまざまな所員がいます。

児童福祉士と児童心理司の違い+必要な資格

児童心理司は、児童相談所で主に心理判定などの業務に携わる心理職です。これになるためには臨床心理士の資格が必要です。

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児童福祉士は、児童相談所での手続き事務・相談・指導などの業務をします。社会福祉士、精神保健福祉士、社会福祉主事(要経験)の資格が必要です。

児童相談所と児童養護施設の違い

児童相談所と児童養護施設は、共に児童福祉法に定められた施設です。似たような機能を担いますが、運営のおおもとが違います。児童相談所は自治体などの行政機関が運営します。児童養護施設は社会福祉法人などの民間団体の運営です。自治体から運営を委託されている児童養護施設もあります。

児童養護施設は、家庭で養育困難な場合や虐待などで保護が必要な児童(18歳未満)が生活する施設です。複雑な問題を抱えた子ども達の生活に寄り添いながら、見守り・指導をしてゆくのが主な仕事です。

②-3. 障害者支援施設での相談業務

障害者施設には、肢体不自由児施設、知的障害者施設、障害者自立支援施設、盲ろう者支援施設、障害者の通所施設や作業所、デイサービスなどがあります。

障害者支援施設は、障害者総合支援法に基づく施設となり、日常生活や社会生活への移行を総合的に支援するものです。

障害の特性により、主に知的障害者対象・身体障害者対象・精神障害者対象の3つに分けられます。

施設で生活する”入所型”と”通所型”の施設があり、通所型施設では生活自立訓練・機能訓練・就労移行支援・就労継続支援・生活介護などのサービスを行います。

障害者支援施設で歓迎される心理資格
  • 社会福祉士
  • 精神保健福祉士
  • 介護福祉士
  • 社会福祉主事

などが優遇されますが施設によって優先度は異なります。資格よりも業務経験が優先される傾向があり、未資格でもOKのところもあります。

障害者施設での相談員は、”相談支援員” や ”生活支援員” など、業務内容によって様々な呼ばれ方をします。

③医療分野での相談業務

医療分野の相談窓口としては、A)保健所や医療機関が開設する窓口・B)自治体が開設する窓口があります。医療分野は専門性が高く、医療・健康相談については医師・看護師・保健士・管理栄養士などがあたることが多くなっています。

その他の医療分野の相談業務としては

  1. 精神障害者に関する相談援助業務
  2. 一般的な病院で医療ソーシャルワーカーとして相談業務にあたる場合

の2種類に分けられます。

つまり、医療分野の相談員として仕事を行うためには、上記の①または②に適した資格の取得が必要になります。

医療分野で相談員をするために必要な資格は?

精神病院などでは、精神障害者の作業指導や各種支援・入退院に伴う相談・手続きなどを行います。これらの業務を行うためには “精神保健福祉士の資格” が必要です。

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一方で、医療ソーシャルワーカーとして従事するためには “社会福祉士の資格” が必要となり、主な業務としては、退院に関る説明や退院後の受け入れ先についての相談・調整・家族への相談業務などを行います。

④産業分野の相談業務

産業分野では、

  • 職業相談
  • 就労支援員
  • 契約先の企業の従業員への相談対応

などがあります。

主な相談の場としては、ハローワークやジョブカフェなどの職業相談・就労相談窓口が多いでしょう。

職業相談員は、主に求職者への情報提供や求人者との仲介、手続きなどの相談業務を行います。履歴書・経歴書の指導や、職業訓練の情報提供や各種制度サービスの紹介をします。相談所の規模にもよりますが、ハローワークでは、障害者部門の担当や生活保護部門の担当など、担当が分かれている所が多いです。

従業員支援プログラム(EAP)提供企業等に登録して、契約先企業の従業員のメンタルケアなどの相談に当たる業務もあります。職場内での悩みや仕事の相談に応じます。対面カウンセリングの他に、電話カウンセリングなども含みます。

産業分野で相談業務をするために必要な資格は?

主に “産業カウンセラー”・”シニア産業カウンセラー”などが必要な資格となってきます。いずれも相談業務の経験が必要とされます。産業カウンセラーについては下記からご確認ください。

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【3】
相談業務に関するまとめ

ひと言で相談業務と言っても非常に範囲が広く、職種や職場、相談対象によっても内容がさまざまです。「援助」の一環として相談業務があり、相談に基づいて様々な問題解決や援助のための手続きなどを行うのが相談員です。

もう一度振り返りますが、相談業務が行える場としては教育福祉医療産業に分かれており、それぞれの分野や職種によって、専門知識の比重が高い相談業務と、その他の業務の比重が高い相談業務があります。

また、それぞれの分野で相談業務を行うために心理資格が必要な場合と、必ずしも資格が必要でなく、実務経験が優先される相談業務もあります。もちろん、専門性の高い相談業務は心理資格が必要とされますが、あなたがどの分野で相談業務を行いたいのかを考え、それに有利な心理資格の取得を目指していく必要があります。

最後に、相談業務は『援助』の一環ですから、「悩む人の相談に乗ってあげたい」という気持ちが大切です。心理カウンセラーと通じるところがありますね。

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もちろん、心理カウンセラー資格を取得して 相談業務 などの仕事をしたり、 独立開業 して自分で人の役に立つ仕事をしていくことも可能です。

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